第19話桜の木の下で

 とある引きこもりの青年。久しぶりにカーテンを開けた

そこには春の気持ちいい日差しがある。とてもいい朝だ

この青年。春の太陽に背中を押され、花見でもしようかと思った

台所にある炊飯ジャーから炊けた白飯を取り出し弁当箱に詰める

そして真ん中に梅干しを一つ。由緒ある日の丸弁当の完成だ

そして冷蔵庫に入っている麦茶を水筒に入れ準備万端

玄関の前まで来ると深呼吸をひとつ

今まで外に出なかったので、春の太陽の勢いを借りて扉を開ける

太陽はまだ上がりきってはいなかったが、十分に温かい

青年はテクテクと河原の桜の木を目指して歩いた

視界がとても明るかった。部屋の中とは大違い

青年はつくづく外に出てよかったと思った

すると、塀の上を歩いていた猫が一声鳴いた

「おお、猫か。のどかでいいな」

青年は猫ののどを撫でてやった。猫はとてもうれしそうだ

青年はまたトコトコ歩き出した。その後を猫が追う

どれくらい歩いただろう。しばらくすると

青年の肩に雀がとまった。ぴーちくぱーちくさえずっている

「おお、雀か。ほがらかでいいな」

猫と雀を従えて、青年は歩いていく

二匹の従者を従え、河原にやってきた

青年は桜の木をみつけるとほほ笑んだ

「これは立派な桜の木だ。うれしくなるなぁ」

青年は桜の木の下に腰を下ろすと、麦茶を一杯飲んだ

河原の土手から川が一望できる。春の太陽は優しかった

青年は弁当を取り出すと、まずは猫と雀に米を分け与えた

猫と雀はうれしそうに食べた。

独りと二匹の花見。たいそう楽しい

青年は自分が引きこもりだということを忘れ果てていた

春の桜が青年の心を癒してくれた

猫はニャーと鳴き、雀はぴーちくぱーちくさえずった

青年の人生はようやく再び動き出そうとしている

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