第7話老人と猫

とある神社の片隅にいつも一匹の猫が座っている

この猫、あまり人になつくこともなく、いつも一匹だけである

ただし例外もある。近所に住むおじいさんが来る時だけは

嬉しそうにのどを鳴らす。どうやら相性がいいようだ


とある秋晴れの日曜日、朝早くに猫の元におじいさんがやってきた

おじいさんは猫のとなりに腰を下ろすと、ゆっくりと話しかけた

「おお、猫よ。元気でおったか。今日はいい天気じゃのう」

「にゃーにゃにゃー、ごろごろにゃー」

「そうかそうか。元気にしておったか」

「今日はお前にごちそうをもってきたぞ。高級煮干しじゃ。

これをだしにしてみそ汁を作るとそれはもう、見事じゃ」

「にゃーにゃーにゃにゃー」

「そうか、そうか、嬉しいか」

猫は煮干しをもらうと、よく噛み味わう。

噛めば噛むほどにうまみが出てくる。大変よろしい

おじいさんは猫の隣でおいしそうに食事中の猫を眺めるのが大好きであった

「それはそうと、猫よ。これから寒くなるぞ。冬はどうするつもりだ?」

「にゃ、にゃ、にゃーにゃにゃーにゃ」

「そうか、そうか。ここにおるのか。寒さは大丈夫か?」

「にゃーにゃーにゃにゃーにゃ」

「そうか、境内の下で寒さをしのぐというのだな。なかなか考えたのう」

「さて、そろそろ行くとするか。猫よ、また来るぞ」

「にゃーにゃー」

おじいさんは猫の頭をなでると、立ち上がり去っていった

おじいさんと猫、会話が通じているかは怪しいが、心は通じているのである



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る