できごころ ※R注意

 隣でソファーの上であぐらをかいて、ジュースのペットボトルを傾けている酒井くんがふと目に留まった。

 普段そんな事を感じた事がないのに、なぜだろう。

 柔らかい首筋に浮き出た喉仏がごくりと上下する様子が、妙にセクシーで。


 ………おいしそう。


 なぜか無性にそう感じた。


 身を乗り出して張り出した部分をぺろりと舐める。

 頭上でペットボトルに口を付けたまま、身動きの取れない酒井くんの喉がぎこちなく動くのを感じた。

 ………楽しいかもしれない。


 何度も喉元を舐め上げ、ちゅっと吸う。微かに肌が粟立って、力が籠った肩が上がる。そっと背中ごしにテーブルへと腕が伸ばされて、ようやく解放された彼の口から零れる吐息が弾んでいた。


「ま、……真尋さん?なにして……」


 焦ったような囁き声が、俺の動きを妨げないためだって知ってる。

 驚いているけど、抵抗はない。

 ああ、好きだなぁって思うと、ものすごく甘い。


「………美味しそうだなって思って」

 存分に喉仏を味わい、それから鎖骨までを唇で食む。柔らかな肌が心地好くて、速まった脈動を肌で感じて、心が緩む。


「お……美味しそう?!まじで?」


「……美味しい」


「…………っ!!!?」


 首筋を舐め上げる。じっとりと浮かんだ汗の味を感じると、触れ合う距離にいるのにもっと近づいた気がした。

 耳の縁を舌で辿り、耳朶を口に含む。吸い上げて甘噛みすると、零れる吐息はすっかりとあがっている。

 浅く繰り返される熱を持った呼気に、温められていくみたいに。

 自分の胸の中もドキドキしている。

 あまりにも、かわいくて、愛おしい………。


 もっと。

 触れたい。顔が見たい。味わいたい。


 渇望が胸の中で渦巻く。


 もっと。もっと。もっと。

 ぜんぶ、余すところなく、俺のものでいて。


「……っ、はぁ………、…………ん、……」


 呼吸音に微かに交じる熱を帯びた声音が嬉しくて、たまらずに顔を上げた。

 いつの間にか息を乱していたのはお互いさまで、久々に絡んだ視線は潤んでいる。


「………真尋さんがえっちぃすぎてもう、もう………」


「美味しそうだったからつい」


「美味しそうなのは絶対真尋さんのほう」


「………味わって?」


 息を整えきれないままに、唇を重ねる。

 柔らかな皮膚も、熱く湿った粘膜も、良く知っているのに飽きることなく欲しい。


 気付けばゼロの距離で触れ合う身体を指で辿る。


「……しようか?」


「したいです」


 こんなにも望んでいて、同じだけ求められることに心が浮き立つ。


「じゃ、したいようにして。ぜんぶ」


 何の戸惑いもなく差し出せる。

 ああ、そうか。出来心は最初から。

 どう転んだって悪くはならないって、全幅の信頼の上で沸き起こっていた。

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