宇宙人襲来!
大分県内で内乱あり
九州各所で、普段とは異なる様子が見られているらしい。
休みの日もそこそこ賑わう大分市内のスーパー銭湯のロビーで、寛ぐ軽装の人々の前に、巨大なモニターがローカルニュースを映しだした。
『本日、佐賀県が急遽他の県からの交通を制限し、未曽有の交通渋滞を起こしているとの情報がありました。この状況に、県知事から正式に佐賀県庁へと情報開示を求めていますが、未だ詳しい返答はないという事です』
女性キャスターが神妙な顔で県庁前から実況する。そこに、画面が切り替わり、着古したユ〇クロコーディネートの男が、モザイク顔で甲高く語り出した。
『あー、こん前な、福岡にいっちきた時に、向こうの方から何か宇宙船みたいなんがきちょってな。佐賀の方やったと思うんやけどな』
『信じられない情報です。佐賀県はゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人という宇宙人と密通し、「肥前さが国」を独立したと鳥栖在住の女性から情報がありました』
ニュースは県内を巡り、やがて論争をもたらした。
***
「そんなこと言ったっちの、大分は温泉県として独立しちょんけん」
「そうやな。別府温泉っち言ったら、ここの所九州の名所に返り咲きしちょるからな」
「何いいよんの。別府温泉なんか、寂れたジジババと猿しか浸からんやろ。やっぱ湯布院温泉や」
「何?湯布院の山奥なんか何もねぇ、今は逆に流行らんやろうが。杉乃井にはかなわん」
「別府は杉乃井しかないけんな」
「そんなことねぇやろうが」
大分県民にとって、温泉県として独立しているという意識はもう既に全員に刻まれていた。
だが、いざ『温泉県』として独立を目の当たりにした時。温泉地筆頭を巡る内乱が勃発したのだった。
この事に関して、県庁は制圧に手間取った。大分県は別府市と由布市のどちらの肩も持てなかったからだ。
過激な論争を映し出すモニターを眺めながら、県民たちはスーパー銭湯でコーヒー牛乳を煽った。
「どうなるんやろうな」
「さぁ。どっちでもいいんやないかな」
大分県民の県民性。それは『ぬるま湯に浸かっている』と評される。
過激な温泉地アピールの傍ら、ほとんどの県民たちはいつもと変わらずのんびりと生活しているのである。
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