(三)‐11

 そして入院した。食欲は全くなかった。そのまま死んでしまいたかった。助けて欲しくはなかった。家族だけでなく恵美を失ったことで、自分の生きる意味が失われたと思った。

 でもせめて、もう一度、恵美の顔を見たかった。顔と言えば、以前病室で恵美を描いた絵のことを思い出した。すぐに見舞いに来た親戚などに絵のことを聞いたが、どこにもないという。そういえば、遺産相続の際、業者に絵を売らせたことがあったが、その中に恵美の絵も入っていたのだろうと思い至った。

 絵の行方について、病室からインターネットをつないで調べてみたものの、よくわからなかった。

 学生時代の恩師に電話で聞いてみたところ、西原七音という卒業生の先輩を紹介された。普段は美術館で学芸員をしているが、美術品関連の調査などもしているという。

 そこで、郁雄はこの人に絵がどこにあるか、そして買い戻してもらえるよう依頼することにした。


(続く)

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