(三)‐8

 郁雄はガラスを両手でドンドン叩きながら彼女の名前を大声で連呼して恵美を起こそうとした。

 すぐに病室内から看護師が出てきて注意を受けた。そしてガラス窓にはブラインドが下ろされた。

「容態は安定しています。お見舞いであれば、また明日来て下さい」

 年配の看護師にそう促された。彼女の病状を聞いたが、親族ではないので答えられないと厳しい口調で言われた。

 郁雄はやむなく、病院を後にするしかなかった。


 翌日、アルバイトを終えて病院に来た。病室を訪れると、別の人がいた。病室前のドアの脇の名札は恵美とは違う人物の名前になっていた。


(続く)

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