(三)‐7

 そして郁雄が病室の前にたどり着いた。心臓の音が高鳴った。高校生の時に初めて恵美と一緒に帰る日のような鼓動であった。そしてドアを開けた。ベッドを見た。恵美が笑顔で迎えてくれるはずのそこには、恵美の姿はなかった。

 一瞬、まさかと思った。病室から出てドア横の名札を確認した。菊間恵美の名前があった。良かった。最悪の事態にはなっていなかった。

 とはいえ、ベッドにいないということは何かが起きているのではないか。そう思い、近くを歩いていた看護師を捕まえて聞いてみた。すると集中治療室に入ったと聞かされた。

 集中治療室の近くの廊下まで案内された。ガラス越しに病室の中を見ることができた。機器がつながれてベッドで眠っている恵美がそこにいた。


(続く)

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