第21話 帰還
「――今だッ!」
「っ…………」
ロティは二連続の高速斬撃を放ち、長槍使いの両の太腿を切り裂いた。
突如として出現した氷の塔に気を取られた覆面男の隙を突いたところで、勝負は喫した。身体から力が抜けるように倒れ込んだ長槍使いを見下ろしながら、ロティは肩で息をする。
(思いの外手こずってしまったな……こいつ、《暗黒球》に閉じ込められて、あれだけ斬撃を喰らってたのに……)
長丁場になった対決はエルシーが遠方から気を逸らしてくれたおかげで幕を終えたが、それがなければどうなっていたことやら……と、ロティは深いため息を吐き出す。彼は粘り強い戦いを見せた覆面男を素直に褒め称えながら、四人を《無限の領域》の鞄に詰め込んだ。
「これは爺さんにも報告しておかないとな……」
ロティは懊悩を抱えながら、よろめいた足取りで移動を開始する。
移動先は突然聳え立った氷の塔だ。目視出来るほどの冷気を放つ氷の塔はエルシーの魔導で作り上げたもので間違いない。彼女の魔導の扱いは既に『王国魔導騎士』にも劣っていないように思える。〈死者の祠〉内部ではロティたちを巻き込むことを思慮して力を制限していたのだろう。元よりアリアのことは心配していないが、あの分ならエルシーも無事だろうとロティは足を早めることをやめた。
十五分ほど歩くと立派に聳え立つ氷の塔は目前に迫り、肌を刺すような寒さに襲われながらもエルシーを発見する。同時にアリアも現れた。
「お二人とも無事で良かったですっ!」
「エルこそ、派手にやったね」
どうやら苦戦していたのはロティらしく、彼は珍しく不貞腐れながら氷の塔を彫刻刀で削り、中にいる残りの覆面男も回収しておいた。それからアリアがボコボコに気絶させた奴らも探して《無限の領域》の鞄に詰め込むと、三人は王都に帰還するのだった――。
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