4話 ごっこ遊び(仮)

4.ごっこ遊び(仮) ①

 別れの危機、というものは、いつだってすぐそばにいる。

 なにがきっかけとなるかは予測が難しい。

 ふとした、小さなことの積み重ねなのだ。

 ジェンガのように、一手間違えば崩壊してしまう。

 危ういものである。


 そう。

 きっかけは本当に小さなこと。

 小さなボタンのかけ違い。

 ひとつのズレだけ。

 ひとつ、手順を変えていたら。

 こんなことにはなっていなかったのだろう。

 今さらこんなことを思っても遅いのはわかっている。わかってはいるけれど。

 どうしてもあの時の行動が悔やまれる。俺がひとつ、どこかで違う行動をしていればと。


 先輩が俺に仕込んだ爆弾。それが運悪く亜子ちゃんに炸裂してしまったのだ。

 しかも、はさらに運悪く、亜子ちゃんが非常に苦手としているものだった。

 先輩を呪いまくっても晴らされぬこの恨み。

 純粋な亜子ちゃんの瞳になんてものを。


 ――まあ、のおかげで亜子ちゃんと一歩仲良くなれたことは、感謝をしている訳ですが。それは先輩にはナイショです。


 そしてこれは余談ではあるが、俺に爆弾を仕込んだその日、先輩は仕事中に足を踏み外し、プールに転落したらしいということは聞いている。くわばらくわばら。


4.ごっこ遊び(仮)

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