第2話無人島①

 曖昧な記憶を掘り起こし、大体の経緯は理解できた。海へと投げ出された俺は、意識をなくし、この島へと流れ着いたというわけか。

 無人島のようだが、これからどうしていくのが正解なのかがわからない。サバイバル経験なんてないからな…。

 とりあえず、状況を整理し、確認してみる。

 俺は、無人島にいる。他には誰も見当たらない。海を眺めても、水平線が続いているだけだ。あの船が針路通りに進んでいたのであれば、ここは大西洋にある島ということになるな。ま、それが事実であろうと、なかろうと今はそれほど関係はないか。そして、1番重要なのは…。

 俺は、背負っていたリュックを、砂浜に下ろした。汗が頬をつたい、流れ落ちる。ここでは、暑すぎる。影のある場所に移動するとしよう。

 森側に移動後、海水を吸って重量が増した、水々しいリュックのファスナーに手をかける。ゆっくりと、引いていくと、中身がリュック同様で、海水で濡れていた。しかし、防水機能がない電子機器以外は本来の用途で使用することができそうだ。

 よって、防水でない電子機器を除いた、少量の食料と飲料水、双眼鏡や財布、腕時計など。タオルも乾かせば、使えるだろう。

 多いとは言えないが、ないよりました。そして、これではすぐに食料が底をつき、どっちみち助からない。おそらく、早めの探索が必要だろう。とはいえ、島の大きさもわからない状態で無闇に歩き回るのも、良い行いとは言えない。今日のところは、周辺で何かないか探してみることにしよう。

 俺は道に迷わないように、石で木にマーキングしながら、森の方へと侵入していく。どんどん進んでは行くが、これといった発見はない。そもそも、植物に関する知識などないため、どれが食用なのかが全くわからない。

 しかし、一つ、誰が見ても間違いなく食べれるものがあった。遠目からは苺に見えたが、これはおそらくラズベリーだろう。なぜ、こんなところに生えているのか不思議だったが、ありがたく頂戴することにした。必要分だけ、摘み取り元の場所へと戻る。

 どうやら、かなり深くまできてしまっていたようだ。長い帰り道が退屈だったせいもあり、ラズベリーをいくつか摘んでしまった。次は、もう少しだけ多めにいただくことにしよう。

 俺が戻る頃には、すでに太陽が沈み始めていた。もうそんな時刻であったとは、気づかなかった。ラズベリーの甘さがクセになり、夕食として、残りも全て食べてしまった。流石に、満腹とはならないが、空腹が紛れる程度には、満足した。

 火が沈み切ると、光源は月だけとなり、ほぼ真っ暗な状況だ。さらに、森からはガサガサと音が止まない。姿は見えないし、音も小さいため、人ではないことは、すぐにわかった。しかし、つい期待してしまい、除いてしまう。

 俺がここに流れ着いたというなら、他の人間もあの船から投げ出されて、ここにきている可能性があるかもしれない。

 改めて思えば、俺が自分の心細さを緩和させるための、言い訳だったのだろう。

 岩陰に葉っぱを敷いただけの布団は、寝心地最悪だったが、昼間の疲労も相まって、その日は自然と眠りについていた。

 その夜。森から吹いてくる風が、生暖かさと森のざわめきを連れてくる。そして、もう一つ…。

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