第3話 カウントダウン
「イ-ヒッヒッ攻略だけじゃ分からないかな、アーヒャッヒャッ君は1ヶ月以内にあの谷原 真奈美と恋人関係にならないといけないよぉ。何かしら条件みたいなのを付けようかなぁ。恋人関係になってぇ、キスでもしようかぁ。よしそうしよぉ。エッヘッヘちなみに出来なかったら君は死ぬよぉ」
こいつは何を言ってるんだ?誰かのイタズラだよな?死ぬとか遊び半分でも言ったらダメだぞ。あぁ、なんか腹立ってきた。
「おい、イタズラはやめてくれよ。どうせ、洸輝のイタズラだろ?流石の俺でも怒るぞ」
いきなり声を出したため、玲翔の声が少し震える。
「イッヒッヒッ福田なんてやつも居たな、アーヒャッヒャッいたずらァ?いたずらを俺がするはずないだろぉ」
は?じゃあ誰だよ。それにイタズラじゃないって、どれだけ俺の事を馬鹿にしてるんだ。流石にそんくらいは判断できるぞ。
「イタズラじゃないって言ってるんだよな?笑わせんな。あとお前は誰だよ。その様子じゃ俺の事も知ってるよな?でもお前は一切名乗らない。不利じゃないか?」
洸輝では無いってことは、クラスメイトの可能性が高い。最悪、誰かっていうのは聞けなくてもヒントくらいは欲しい。
「イタズラかイタズラじゃないかなんてどうでもいいんだよ」
今までの声より二音ほど低くなった声にビクッとする玲翔。さっきまでの玲翔の態度は何処かに消え、不気味な空間には威圧感のみが残る。
「イ-ヒッヒッ俺の名前、か。アッハッハッ君にまだ僕の存在を完全認識して欲しくないから、恋の神様とでも言っておこうかなぁ」
少し間があいてから、自称恋の神様が意味のわからないことを言う。
もしかして、俺の恋の味方か?いや、変なことを考えるのはよそう。絶対にこれはイタズラだ。
「イタズラはやめてくれ。どうせ、クラスのやつだろ?それに谷原さんをイタズラに利用するのはやめてくれ。谷原さんが可哀想だ」
俺へのイタズラなら、他の人を巻き込むことはして欲しくないな。ましてや学校のアイドル的存在の人に。
「エヘアヘウハハホそろそろ時間だ。ワハチホヒホフイタズラと思うのは自由だが、言ったことを忘れるなよぉ」
自称恋の神様がそう言うと、部屋が真っ白に光り、破裂音のような大きな音が響いた。
それらに玲翔はびっくりし、腰を抜かす。
「い、今のは何だったんだよ。痛ぇぇぇ……。てか、さっきまでの空間はどこに行ったんだ!?もしや光と音で驚かせ、その間に撤収したってことか!納得納得」
まあ誰かのイタズラだろうし、あんま気にする事は無いか。
てか、早く学校行かないと遅刻する!
「ハァハァ」
二日連続で遅刻ギリギリは辛いって!
遅刻しなくて良かったけれども!また昨日みたいにシーンとした教室に入らないと行けないのかなぁ。もしそうだったら嫌だなぁ。昨日感じた視線もなければ嬉しいな。
玲翔はそんなことを考えながら教室に向かう。
そして教室のドアの前に立ち、深呼吸をする。
シーンとした教室のドアに手をかけ、、
ちょっと待てよ、静かすぎないか?これは絶対にみんな座ってるやつやん!詰んだ詰んだ詰んだ終わった終わった終わった。あー、せめて見ないで見ないで見ないで!
「ふう、はあ、」
深呼吸を再びした玲翔は、目を閉じながら再び教室のドアに手をかけ、今度こそちゃんと開けた。
そしてそっと一歩教室に踏み入れ、パッと目を開ける。
ちょ、ちょっと眩しい。
蛍光灯の光が少し眩しい……。
まあいいや、、よし自席に行くか。
玲翔は自席の方に目を向ける。
すると、玲翔は谷原 真奈美と目が合った。
んっ!?今、谷原さんと目が合ったよね?なになに俺の事をずっと見てたとか!?や、やばい緊張する!と、とりあえず早く自席に座って落ち着かないと!
ちょっと急ぎ足になった玲翔は自席に座る。ちょっと汗ばみ、未だに緊張している玲翔。
「……きくん!渋垣くん!」
玲翔は緊張のあまり、ちゃんと聞こえなかったようだ。
「ん、ん何かな?」
「い、いや『おはよう』って言っても反応が無かったから…。それに教室に入ってきた時、すごくスローだったから、さ?」
な、なるほど。って、スローだったの!?マジかよ!とりあえず言い訳を考えないと……。うーん、やっぱ事実に近い方がいいよな。
「あ、ごめん谷原さん。ちょっとぼっとしててさ。なんか朝から色々とあって……」
まあ九割事実だよな?変なやつにイタズラされるし、遅刻ギリギリになったていうのも合ってるし。
「あ、なるほどね。なんか、ごめんね?」
笑顔で言う谷原。
「いいやちゃんと聞いてない俺が悪かったよ」
谷原と滅多に話したことない玲翔の顔には、少し緊張が残る。
「あ、そういえば渋垣く……」
「朝礼始めるぞーはい号令」
谷原が何か言おうとした所で、担任が来た。
今谷原さんなんか言おうとしてたよね?何なんだろ。朝礼終わったら聞くか。
「一限は音楽だから遅れないようにちゃんと準備して、音楽室に向かうこと。はいじゃあ号令」
「きりーつれい」
「「ありがとうございました」」
朝礼が終わった。よし、谷原さんに聞くか。
玲翔は立ったまま谷原に話しかけた。
「さ、さっき俺のこと呼んだよね?なにかな」
ちょっとこの言い方だと、なんかナルシスト感といいか自意識過剰というか、そんな雰囲気があるから変な感じに思われないかな……。
「あ、ごめん何でもないんだ。ほんとにごめん!」
谷原は直ぐに教室を出て、音楽室へ向かった。
やっぱ俺って谷原さんに好かれてないのかなあ…。
だって絶対、さっき俺の事呼ぼうとしてたよね。
心做しか谷原さんの顔もくもってた気がする。
なんかやらかしたのかな。
あぁ、もうなんだよ!朝から『お前は1ヶ月で死ぬ』的なこと言われて!イタズラでも意外と心に刺さるんだよ!あぁ、もうやだ。帰りてぇ。
そう落ち込む玲翔を他所に、玲翔の死へのカウントダウンは始まったのであった。
───死まで残り30日。
命懸けのヒロイン攻略 夢咲トモ @bousuito
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