第2話 自分の気持ち
「ハァハァ」
全力で走ったおかげでギリギリ遅刻には
ならなかった。
遅刻になったら色々とバカにされるしな、
本当によかった。
そう思いながら玲翔は下駄箱の前で
靴を履き替え、教室に向かった。
それにしても、俺の青春って腐ってる
よなぁ…。別に彼女がいる訳でもないし、
クラスカーストの最上位にいる訳でもないし、友達と遊びに行くなんて滅多にないし。何かすごいイベントでも起きてくんねぇかなぁ……。
教室に着いた玲翔はドアを開ける。
そろそろ朝礼が始まるようで、みんなは席に座り静かにしていた。
うーんなんかすごく気まづいなぁ。
あれ?なんかすごく視線を感じるんですけど、みんなから見られてませんかね?
なんかこういうのって嫌……。
だ、だるいわァ(?)
だるそうにしながらも玲翔は自席に座る。
「おはよう渋垣くん」
座ると同時に玲翔の隣の席の女子が
挨拶をする。
「お、おはよう谷原さん」
慌てて挨拶し返す玲翔。
なんてったってこの谷原さんは、
僕が通うここ相沢学園一の美少女だ。
美人で茶髪ロングの清楚系。
頭も良くて運動神経も普通に良い。
もちろんクラスカースト最上位。
そりゃあいきなり話しかけられると
緊張で慌ててしまう。
俺の現在の青春最高ポイントは、
谷原さんの隣の席っていうことくらいだ。
ちなみに谷原さんは窓際の席。
つまり谷原さんの隣の席は俺だけ!独り占めみたいなもんだな!
まあちゃんと話したことないけどな。
無意識に微笑を浮かべる玲翔。
それほど挨拶されたことが嬉しかったようだ。
「これで朝礼は終わりだ。じゃあ一限の準備をちゃんとするように」
担任の先生がそう言い、教室から出てくとクラスのみんなは動物のように騒ぎ出した。
そろそろあいつが来る頃か……。
「おはよぉ!玲翔ォ!」
「あぁ、おはよ」
来た来た。こいつは俺の友達の福田 洸輝(ふくだ こうき)だ。友達と言っても一年半くらいの関係だが、入学した頃くらいからこいつとずっと一緒にいる。
あとこいつはめちゃくちゃバカだから。
たまに不可解な行動するから。気を張っておけよ!
「朝礼前のお前面白かったな!あのなんて言うんだ?えーっと、わかんねぇわw」
「いやいや大前提として、それを言うなよ…。自分でもちゃんと浮いてるなぁ…って思ったし!あと分からないなら言うな!」
「あぁごめんてwごめんてw」
ほらほらこいつ空気読めないんだわ。ほんとにバカなんだわ。
「まあいいよ。早く一限の準備をしろ。さっき先生も言ってただろ?てかお前課題やったか?」
「あ、忘れてた!ありがとな玲翔」
やっぱこいつは馬鹿だ。
四限が終わり、昼休みが始まった。
玲翔は始まった瞬間に、急いで購買へ行き、即売切れしてしまう幻のパン、
その名も「パン!」を買いに行った。
購買は沢山の人であふれ返っており、
玲翔は群衆の真ん中の方で押しつぶされていた。
「ふぅ。やっと人が減ったよ……。流石にパン!は無いよなぁ…」
玲翔の思っていた通りパン!は売切れており、
超絶不人気のあんこカレーパン一つだけが残っていた。
「はあ、またこれだけかぁ。あんま美味しくないんだよな」
あんこカレーパンを取ろうとした瞬間、玲翔の手と誰かの手が重なる。
ん?誰だ?と思いふと顔を上げると、そこには谷原さんがいた。
「あ、渋垣くんそれを買いたいのなら全然買っていいよ!」
「いやいや谷原さんいつもこれ食べてるでしょ?いいよ買いなよ」
これが優しい男なのか。ってもしかして今俺引かれてるんじゃないか?どさくさに紛れて、谷原さんがいつもこれ食べてること指摘したし……。
「あ、ありがと!じゃあこれ私が買うね」
「いえいえ」
よ、良かったぁ。多分引かれてないと思う!
とりあえず食うものないし、飲み物だけ買っていくか。
自動販売機でお茶を買い、教室に戻った玲翔。
自席に座ってスマホを出そうとした時に予想外の出来事が起きた。
「さっきはありがとね渋垣くん。良かったらなんだけどこのあんこカレーパン半分あげるよ。その様子じゃ食べる物ないよね。体にも悪いから、さ」
なにこれかわいい。谷原さん可愛い。
も、貰いたいけどここは男を見せるとこだ!
「谷原さん。有難いけど、大丈夫だよ。お茶だけで十分。あと、谷原さんのお金で買ったやつでしょ?自分で全部食べなよ」
よし決まった!かっこいいだろ!(殴)
「だめだよ。ちゃんとたべないと。はい、半分上げる」
え、天使ですか?俺は今から昇天するのですか?
「え、申し訳ないよ」
谷原さんが玲翔のことを上目遣いに見る。
「あ、じゃ、じゃあ貰うね。ありがと…」
「うん!」
ぐぬぬ…谷原さんの可愛さに負けてしまった。
半分貰ったあんこカレーパンでも食うか…。
あんこカレーパンを頬張る玲翔。
やっぱあんことカレーは合わないな……。
正直不味いぞ。てか、なんか視線を感じるんだが。
「どう?渋垣くん美味しい?」
「う、う、うん美味しいよ!」
「良かったぁ。やっぱこのパンって美味しいよね!特にカレーのスパイシーさを、あんこの甘みでマイルドにするから甘辛になるというかなんというか」
「う、うん」
視線の正体は谷原さんか…。いきなり過ぎて慌てたし、美味しいと思ってないのに美味しいって言っちゃったし…。それに谷原さんが独特な舌を持ってることも知っちゃったし。
い、いやでもこんだけ谷原さんと話せたのははじめてだぞ!嬉しい!あれかな、やっぱ俺って谷原さんに恋をしてるのかなぁ。恋したことないからよく分からないんだよなぁ…。
このあと谷原さんと会話することは無く、
この日の学校は終わった。
玲翔は今日谷原さんと起きた出来事を思い返しながら、帰路についていた。
家に着いた玲翔は鍵を開け、家に入った。
制服を脱ぎ、部屋着に着替え、ゲームをし始めた。
午後六時、玲翔は一人暮らしの為、夕飯の準備を始めた。
ご飯を食べ終えた玲翔はお風呂に入り、課題を終わらせ、眠りについた。
学校が終わってから特に出来事は起きなかった。
午前六時になりアラームが鳴った。玲翔は起きていつも通り顔を洗って、いつも通りご飯を用意して、いつも通りご飯を食べて、いつも通り制服に着替え、いつも通り靴を履いた。
そして、玄関のドアを開け外に出た。
すると、そこは自分の家の前の光景とは違い、真っ暗な部屋になっていた。
恐る恐るその部屋の中を進むと、いきなり大きく10と書かれた壁が現れた。
「イーヒッヒッお前は渋垣玲翔で間違いないな?アーヒャッヒャッお前は谷原真奈美を攻略しなければならない」
聞き覚えの無い声と内容と、見覚えのない不気味な空間に困惑する玲翔は声も出ず、ただ立っているだけだった。
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