雀
ツヨシ
第1話
あれは私が入院したときのことだ。
一階の四人部屋で私以外には中学生の男の子が入院していた。
驚くほど無口で無表情な男の子だ。
不気味で不自然なほどに。
ベッドは私が入口側で、男の子が窓側だった。
検査が終わり、少し落ち着いていると、窓でコンという音が響いた。
男の子のすぐ横の窓だ。
私は窓に何かが当ったのだと思った。
どういうわけだが妙に気になった私は、外まで見に行った。
すると窓の下に雀が一匹死んでいた。
窓にぶつかって死んだらしい。
首があらぬ方向に曲がっている。
私は鳥が窓ガラスに当って死ぬことがあると聞いていたので、特に気にすることはなかった。
このあたりでは雀を目にすることは珍しくない。
翌朝もう一度見てみると、雀の屍骸は誰かが片付けたのか、見当たらなくなっていた。
しかしその日の昼過ぎに、また窓になにかが当る音を聞いた。
昨日と同じく男の子の横の窓で。
見に行くと、また雀の屍骸があった。
それも翌朝に見てみると、なくなっていた。
そしてそれと同じことが毎日続いたのだ。
ほぼ同時刻に同じ窓に雀が自らぶつかって死ぬのだ。
――いったいなんなんだ……。
気味が悪くなってきたが、毎日窓に雀がぶつかって死ぬので部屋を変えてください、とは言えなかった。
あまりにも馬鹿げている。
その現象は一ヶ月ほど一日も欠かすことなく続いた。
ところがある朝、同室の男の子が退院した。
するとその日以来、雀が窓にぶつかることは一切なくなったのだ。
終
雀 ツヨシ @kunkunkonkon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます