第3話「本気?」
少女は目を閉じて、一度「すう~はあ~」とゆっくり深呼吸をした後こちらに向き直った。先程までとは違い、彼女を
真剣な瞳でこちらをとらえ、少女はゆっくりと口を開いた。
「時間がないの」
「え?」
「ここにいること自体が私にとってもリスキーであることを察してください、いいですか? 時間が惜しいので今から敬語をやめます」
こちらの反応など全く意に介さず、事務的な口調で一気にまくしたてる。
「死にたくなかったら今から私の指示に黙って従って。生きて帰れたらあなたの疑問に答えてあげるけど、もうすぐ死ぬ人間に
そこで少女は両手をそれぞれ、モッズコート左右の外ポケットに突っ込んで、さらに一言。
「黙って従うかここで死ぬか、すぐに選んで。ここで死にたいのなら、私はあなたをここに置いて行く」
少女の表情に険しさが増す。相変わらず状況はつかめないが、彼女が選択を迫っていることは理解した。『服従』か『死』か。冷静に考えればどちらも馬鹿げている。ただ、今の有益な情報源はこの少女だけであるという手前、後者を選べば彼女に見放されるどころか、どうやら死ぬらしい。
思考を整理し口を開きかけたその瞬間、彼女がクルリと半回転し背を向け、肩越しに呟いた。
「残念だけど時間切れ。サヨナラ」
そのまま小走りで立ち去ろうとする少女を後ろから慌てて呼び止める。
「ちょッ!? ちょっと待って!!」
幸いにもこちらの呼びかけを無視することなく、駆けだしたその足を止めて立ち止まってくれた。10メートル程離れた少女の元まで急いで駆け寄る。本人はこちらに背を向けたまま、肩越しに呟いた。
「……なに?」
「従うので、その……助けてください」
余裕もなかったため、本心をそのまま口にした。困っていることも、ここにいても問題が解決しないことも明白だ。何もしないより、彼女に従う他ない。
「絶対服従よ。それでも?」
少女は振り向きざまに念を押す。もう、後には戻れないとでもいうように。
「……ああ、分かった」
それを聞いた彼女の顔に一瞬、不敵な笑みが浮かんだ気がした。
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