第2話「現れた少女」
時刻は正午くらいだろうか。道路脇の歩道に移動し、再び腰を下ろす。頭痛もだいぶ治まり楽にはなったが、体は怠く、体調がいいとは言えない。
「こんなところで何してるんだろ、俺」
別に寝ぼけているわけではなく、寝る前に何をしていたかすら、覚醒しきった頭で思考しても思い出せない。
「…………」
その場に座りつくすこと数秒、このままでは何も解決するわけではないことを悟るのに、そう時間はかからなかった。喉も乾いている。ここですくんでいても埒が明かない。
決心し、その場に立ち上がった―――――その時だった。
不意に、真後ろから声をかけられた。
「もういいかしら」
「うわッ!?」
この空間にいるのは自分だけだと完全に思い込んでいたため素っ頓狂な声を上げながら振り向きざまに盛大に尻もちをついた。
「ええ……? そんなに驚かなくても……」
声をかけてきた張本人はこちらの反応を見て少し引き気味で、「気配を消したつもりはないんだけどなあ」などと独り言ちでいるが、ハッキリ言ってこの際どうでもいい。
自分の背後に一人の少女が、確かに立っていた。一体いつからそこにいたのか、全くわからなかった。
年齢は20歳前後だろうか。整った容姿に白い肌、ぱっちりと開いた目と胸元までとどく薄茶色のロングヘア―が印象的である。ジャンパースカートの上にモッズコートを羽織っているため、上半身はだいぶ着込んでいる。一方、足元には黒のショートブーツを履いているが靴下から先、スカート下の太ももまでは素足のため、腰下は肌の露出が目立つ格好である。
「まあ? 驚かせてしまったのであれば謝りますけど」
そういって目の前の少女は、未だ地面にへたり込んで身動きできずにいた自分に右手を差し出してくる。
「立てますか?」
「……ああ」
差し出された手に手を伸ばし、握るなり少女は後ろに体重をかけて起こしてくれた。
「ありがとう、ええっと……」
お礼を言うついでに、自分の持つ疑問―――ここはどこで、君は誰で、いつからいたのか―――などといった疑問について目の前の少女に問おうとしたが、この状況も相まって、考えがまとまらず言葉に詰まる。
そんな、こちらの様子など一切意に介することなく、目の前の少女はこちらを制すように手の平をこちらに向けストップのしぐさを取った。
「あなたの言いたいことは良くわかります。ですが今はあまり時間がないので後にしてください」
ピシャリとそう言い放った後、「まあ時間がないのは私が少し遅れたせいだけど」と小声で付け加えたのが聞こえた。
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