武器屋とポタージュ

武器屋募集

 レイトの街は石畳が広がる都市だ。その都市は国の4大都市に数えられるほど発展しているが、4大都市を抑えて1位に躍り出る都市がある。当然首都である。


「シルダさーん?怪盗カードルを逃したって?」


「うーん、見つからないんですよね。あの後探したんですけど吹雪竜レベルの魔力を感じたり色々ありまして」


首都で開かれた評議会が終了した、評議員を務める騎士団長シルダ含む老若男女が集まっていたこの椅子が並ぶ四角形の会場に残ったのは騎士団長を25さいにして務めるポニーテールの重装備シルダと魔法系の開発を務める魔法機関長のみだ。


 魔法機関長は体調は1メートルも満たない。魔法で成長を止めているという噂もある。が本人人に聞くとマジだという。ローブを引きずり、三角帽子の一見少年に見える彼はシルダと共に評議会の会場でグダグダと残っていた。


「この国No.1が怪盗に巻かれるのはやばいんじゃ無いんですかね?そして街中で吹雪竜って………10日ほど前………確かに吹雪竜の子供っぽい魔力は平野で感知しましたけども」


「ほんとですもん!!」


椅子をバンと叩いてムキになるシルダ。揶揄うように笑う魔法機関長は会場を眺めながら歩き回る。


「まぁそれはそれとして………今年の鋼の団の襲撃はレイトの街でいいんだね?」


「そうです。なぜか硬質化した皮膚や殻を持つモンスター集団の襲撃、10年に1回ですが………今年はレイトの街です」


「なんで来るんだろうね?」


「知りませんよ。魔法機関長なら調べてください」


「やだよ。あいつら硬いから近づきたく無い」


10年に一回のモンスターの大規模侵攻はシルダに騎士団長にとっては2回目のことだ。


「今年こそはリベンジしたいんですよ」


「前回は騎士団結構被害食らったからね」


「魔法機関も相当ボロボロでしたがね」


「何にせよ武器が足りなかった。あいつら硬いからすぐこっちは刃こぼれする。魔法も連発させられりゃ杖に負担がかかる」


 魔法機関長は目を瞑り、前回の鋼の団の襲撃を思い返した。


 全てを跳ね返すモンスターの体。街を守ろうとしてきた自分たちの努力を笑うように攻撃を意に介さず、街のレンガ、石材を食らっていった。彼らの硬質化はその建材を取り込むことによって強化されることが予測されている。


「だからこそ今回決まったのさ。騎士団の防衛力強化、魔法機関の開発と訓練増強、そして」


「武器屋の募集」


シルダは暗くいった。約10日ほど前武器屋の少女と関わりを持った。傷つけることが怖い、加害に武器を使わない人にしか武器を売ることができないという不思議な子だった。その記憶が今回の防衛のためとはいえ戦闘行為に武器屋を募集するという決定にどこかシルダに引っかかりを感じさせていた。


「ココって子のことをまだ気にしてるの?そんな例は殆どの武器屋に当てはまらないよう」


「わかってますよ。でもココちゃんは嫌がるかなって」


「でも守るんだ、僕らは」


武器屋の募集にそのココが参加するかどうかは魔法機関長にとってはどちらでもよかった。彼には覚悟がある。守る覚悟が。だから他人を信用し、協力はするが頼りっきりにはならない。


「ドルさん………」


 ドルと呼ばれたその男はローブを引きずりながら会場から出ていった。1人残されたシルダは目を瞑り自身の剣を握った。なんだかわからないがセンシティブな気持ちだった。傷つける、傷という言葉が胸の中で響いた。


「不思議で難しい言葉ね。傷って」


シルダは会議で疲れて制服がわりの重装備のベルトを外しながらそこから彼女もまた出ていった。


 シルダは広い評議会の廊下を闊歩していた。同じような窓が視界の奥から手前へと流れること数分、やっとのことで出口が見えてきた。評議会から出るとすぐ、騎士団の修練場が見えた。今日も威勢よく鍛錬を行う声が聞こえて来る。


 しかし団長である彼女は顔を出す気がなかった。武器屋の募集が喉に仕えた骨のように心にずっと引っかかっていた。


 「ココちゃんの武器………えぐいくらい質良かったよなぁ………協力してくれればいいんだけど………」


しかし彼女は国の盾であり剣である、守るべき対象である国民のココに無理強いはできなかった。欲を言えばココを国の専属武器屋として雇いたいくらいだった。そしてナイトとしてであるのならカゲトもだ。





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