レンガの街
レイトの街は街の中に実力者が多いということもあり、関所も厳しくはなかった。何か問題が起きても、戦士や魔法使いがすぐに駆けつけてきてくれるのだ。若干拍子抜けなほどすぐに街に入ることができた2人の眼前にはレンガと木を組み合わせた建物が所狭しと並んでいる。住宅群は均質的だが、商店は露店からレストラン、喫茶店までもこれでもかと目立とうとしているように特色のある外見だ。
これなら迷子になっら目印に店や宿屋などを使えるな、そう考えたココはカゲトに切り出した。
「さっき関所でもらった地図の宿屋で集合っとことでもいいかな?街の中なら多分安全だし………」
ココはカゲトの自分に同行してくれるという申し出は嬉しかったが、自分の行動全てに付き合わせるのは申し訳ないと思うと同時に、自分の成長にもならないと感じていた。
「わかった。地図は君が持っていって」
「ありがとう!」
ココはそういうと深呼吸を始めた。そして住宅群の方ではなく、商業群の方へとゆっくりと歩いていった。人混みに突っ込むとなれば大なり小なり加害の危険が伴う。人の足を踏んだらカバンに衝突したり考えられる。ココは少し縮こまるように人混みに紛れていった。カゲトはその背中を内心親の目線で見つめていた。
彼女は少しでも誰かと肩が当たらないように靴をを踏まないように気をつけて歩いていた。しかしいくら気をつけていても彼女は何回も振り返り戻ろうとする。人が多いのでそれが逆に迷惑となる、そう考え彼女は頭をフルに使い人とあたらないように、そして少し当たっても平気だと自分に言い聞かせることに頭のリソースを割いた。
「頑張れココ………」
カゲトは彼女の背中が見えなくなるまで見つめていた。武器を傷つけない用途で売ろうとし、本人も加害に恐怖心を持っている彼女が心配で気が気でなかった。
気がつくと街に同じタイミングで入ってきた人たちも去り、彼は1人になっていた。ポツンと残された彼は少し自己嫌悪する。
「しまった。俺は心配しすぎだな………そりゃ恩人に失礼かもな………反省せねば………はぁ…」
カゲトは自分の行為に嫌気がさしてちょっとネガティブになって街へと歩き出した。凹むときは凹む、彼の自分に対する見方は間違っていない。
その頃ココは役所にやってきていた。出入りする人が軒並みお堅そうな人々だ。彼女はそっと中に入るとすぐ足元に書いてある館内マップを見つめた。丁寧に現在地が書かれたそのマップはココないくべき場所へのルートをわかりやすくしてくれていた。
「現在地書いた人すごいな……便利だな……」
ココがマップをよく確認していると真後ろから気配を感じると同時に声が聞こえた。役所の従業員らしい人が出入り口近くで止まっていた過去に衝突しそうになっていた。
「嬢ちゃん、真ん中に立っとると危ないぜ」
「す、すみません………!!ごめんなさい!」
「う、うぉぉ…謝りすぎだぜ嬢ちゃん。まぁ気をつけてな」
見知らぬ人は戸惑いながら役所の奥へと早足で歩いていった。早足で歩くのはココにとっては羨ましいことである。
「端っこから足元のマップ見なきゃ………見にくいや」
入り口から入ってきてすぐ正面にあるマップなので端っこにいると見るのが難しいこと限らない。向こうのほうはまだしも手前が見えない。
端っこから動かないようにしながら体を全力で傾ける彼女に通り過ぎる人々一瞬びっくりした様子で過ぎ去っていった。
「どの部署に行くんだい。武器屋さん」
ココが声の主の方を振り向くと20代後半と見える背の高い女性がサイドテールを揺らして近づいてきていた。
「商売関係です。この町で物を売る許可使用などは………」
「なるほどね………OKついてきな武器屋さん」
その女性はココが見たことのないかかとの高い靴でカツカツと役所の床をならして歩いていく。ココもあわてて女性についていく。
「あの…なんで武器屋ってわかったんですか?」
「ん?この国の共通の胸章だろ、それ?銀とはトップクラスの武器屋じゃないか。製造も自分で?」
「はい……自分で作った物を店で並べるタイプの店です。先代は仕入れてもいたんですけど、私は自分で作ろうと思って」
「ふーん……それでこの街に何をしにきたのさ?客には困らないだろう。その胸章がその証に見えるが」
「確かに……先代まではちゃんと武器屋で売れてました……お客さんには困らない程度には」
「だろうさ」
「でも2代目の私は違うんです。店にいると………お客さんに困らないんじゃなくて………」
ココはおずおずと自分の弱点ともいうべき、武器屋として失格かもしれない事情を打ち明け始めた。立派な武器屋になりたい、武器を売りたいが、傷つけることが怖い、ということを。不思議とこのサイドテールのお姉さんには話しやすい。自分にない毅然とした態度、自信を持っていそうだからだろうか。
「お客さんが困るんです」
「んん?」
初めて女性の自信ありげな態度が困惑に切り替わった。
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