Second, Tourmaline

1.Machine

005 機械の国

トルマリン王国といえば、言わずと知れた機械の国である。世界で使われている電子機器のほとんどが、この国で生産されている。


森を抜けて町へ入ると、そこは別世界だった。なんど来てもこの光景には驚かされる。道路を走っているのは自動走行の車、店員さんはすべてドローン。国民の多くが輸出産業で財をなし、小国ながらオパール王国にも引けを取らない国力を持っている。


「ヨウコソ、トルマリンオウコクヘ。」


早速、案内用ドローンに声をかけられた。


「モウシワケアリマセン、アナタノボウケンシャジョウホウガ、カクニンデキマセン。コノママギルドヘゴアンナイイタシマスノデ、ボウケンシャトウロクヲオネガイシマス。」


そう、冒険者として活動するには、各国のギルドで登録を受ける必要がある。依頼を受けるつもりがないのならば登録も必要ないが、トルマリン王国では登録しておいたほうが何かと便利だ。特にギルドカード決済はありがたい。大金を持ち歩くのは、冒険者といえど危険だが、この方法ならば、ギルドの口座から引き落としてもらうことができる。


「最近何か変わったことはある?」


道中、ドローンに話しかけてみる。あまり複雑な会話はできないが、ある程度の言葉ならば理解してもらえる。


「ソウデスネ。ユウシャサマガ、テラーヲタオシテクダサッタコトデ、ヘイワガオトズレマシタ。」


ちょっと照れるが、平和は長くは続いていないことをカイトは知っている。


「アト、サイキンドローンノジコガタハツシテイマス。オナジドローントシテ、モウシワケナイカギリデス。


トウチャクシマシタ。コチラガギルドデス。」


最後の話は少し気になったが、とりあえずお礼を言ってギルドに入る。ギルド内もかなり電子化されているようだ。ただ、今カイトは身分を偽っている身である。見破られない自信はあるが、機械相手に偽装魔法が通用するのかは定かでない。


「うーん。やっぱりここは人相手がいいよね。」


迷った末、安全策を取ることにした。いくらドローンが運営しているとはいえ、ギルドのスタッフは大勢いる。それこそ、ドローンの事故などでギルドの機能がマヒした場合に備える意味もある。


「すみません。」


奥のカウンターにいた女性に声をかける。


「はい、どうされました?」


トルマリン王国は友好国なので、あまりだますような真似はしづらい。いずれサンダー国王にも謁見しなければならないことを考えると、ギルドマスターには話を通しておいたほうがよさそうだ。


「ギルドマスターはいらっしゃいますか?」


少し怪訝な顔をされたので、冒険者証とクリスタル国王から預かってきた書状を見せる。


「あっ!失礼しました。すぐにギルドマスターに連絡します。」


国王の使者か何かと勘違いされていそうな気もするが、ギルドマスターには会えそうなのでよかった。

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