006 ギルドマスター

「いやー。お待たせいたしました。ギルドマスターのパウチです。あなたがクリスタル国王使者の方ですか?」


やっぱり勘違いされていた。ここだと人の目があるため、特に何も答えず、促されるままに応接室へ向かった。


「申し訳ありません、僕は正確には使者ではないんです。冒険者のカイトといいます。実は事情がありまして…。」


さすがに友好国とはいえ、事情のすべてを話すことはできない。もちろん、あなたの国に探し物があるので、探させてください、なんて土足で踏み込むようなことも言えない。


「最近ドローンの事故が多発していると伺いました。その件で、サンダー国王陛下にご助力せよ、との命を受けております。」


とりあえずサンダー国王に会うことができれば、事情も話すことができるし、もしかするとの場所を教えてもらえるかもしれない。早速だました格好になってしまったが、ギルドマスターが信用のおける人物なのかは、今のところ判明していない。加えて、この部屋が何者かに盗聴されている危険だってある。


「なるほど、かしこまりました。ご助力の申し出、感謝いたします。すぐに王城へ連絡いたしますので、ここでお待ちください。」


しばらく待っていると、ギルドマスターのパウチさんが戻ってきた。


「カイト殿。すぐに王城へ参られよ、とのことでした。車を手配いたしましたので、お使いください。」


本当は転移魔法の方が早いのだけれど、断るのも悪いので、車に乗せてもらうことにした。乗ってみたかった、という気持ちも大きい。


「意外と早いんだな。」


思ったよりスピードがある。自動走行なので衝突などはしないとのことだが、少し怖い。王城までは20分ほど、とのことだったので、車に搭載されているドローンに例の事故のことを聞いてみる。


「最近ドローンの事故が多発しているみたいだけど、どんな状況なの?」


そんな意味で言ったつもりはないのだが、スピードが少し緩やかになった。機械に気を使わせてしまった。


「ハイ。ジコガオキダシタノハ、ココスウカゲツノコトデス。ソレマデハ、オオキナジコハイチドモアリマセンデシタ。チュウオウセイギョシステムノテンケンナドガオコナワレマシタガ、イジョウハハッケンサレテオリマセン。」


その後、事故の詳しい内容を説明された。基本的には暴走事故のようだった。停止指令を受けているはずのドローンが勝手に動いたり、ルートをはずれたドローンが発見されたり、といった感じだ。


話を聞き終えたころ、王城に到着した。


「うわっ!やっぱりすごいな。機械の城か…。」


トルマリン城は、超メカニカルだ。子ども心をくすぐられるというか、なんというか。黒を基調とするシックな外観、ところどころアクセントのように無骨な歯車が姿を見せている。有事には巨大兵器になるのだが、これは国家機密である。勇者として冒険していたころに見せてもらったことがある。正直、戦いたくはない。


謁見の間へ直通の通路を進み、部屋に入ると、すぐに奥の扉が開いた。


「協力の申し出感謝する。カイト…いや勇者ジュエルよ。」

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