2.Adventure

004 九つの宝石

「九つの宝石は、世界の国々に散らばって存在していると考えるべきじゃろう。は密かにオパール国内を探させたが、発見には至っておらぬ。九つという数からみても、そう考えるべきじゃろう。」



世界が九つの国に分かれた原因は、後継問題とされている。若くして亡くなった当時の国王、というよりも世界の王には子がいなかった。王位継承権を持つ者もなく、当時臣下であった十人が世界を分割領有することとなった。


この時、国王を手にかけた疑いがあった一人の臣下には、土地が与えられなかった。この者の正体がテラーであったことは、後にわかることとなる。


結果として、世界には九つの国が誕生し、テラーとの長きにわたる争いが幕を開けた。これが歴史書に残る史実である。



「まずはトルマリン王国へ向かうとよいじゃろう。トルマリン国王のサンダーとは長い付き合いじゃ。」



国王のアドバイスを受け、ジュエルはトルマリン王国への旅路についた。国王の密命であるため、目立つ行動はできない。魔法で姿を変え、一冒険者、カイトとして冒険を始めた。



「なんだか初めて冒険に出た日を思い出すなあ。」



あの日のことを忘れることはないだろう。村の皆に送り出され、冒険に出たのは十三歳の時だった。村を出てすぐにオオカミに襲われ、一度逃げ帰ったのは苦い思い出だ。



「ぐがぁっ!」



感慨に浸っていたジュエル、改めカイトの前に、オオカミが現れた。カイトは魔力量などを魔法により偽装している。そのため、オオカミの目にうつっているのは、ただのレベル1の新人冒険者に過ぎない。


勢いよく襲いかかるオオカミに対し、カイトは冷静に移動阻害魔法を展開する。



「フラッシュバインド。」



強烈な閃光せんこうを受け、オオカミは逃げ出した。とは違う。


その後何度かオオカミに出くわしたが、特段の問題なくカイトはトルマリン王国の関所に到着した。



「冒険者証か入国許可証を見せてください。」



関所の役人がカイトに声をかけた。カイトは冒険者証を役人に手渡す。



「えーっと、カイトさんね。レベルは1か。新人冒険者さんだね。あぁ、オパール王国から。って、道中大丈夫だったかい?」



役人が驚きの表情で心配の言葉を発した。そう、本来レベル1の新人冒険者が無傷で通り抜けられるような森ではない。少しルートを考えるべきだったかもしれないが、なんとかごまかす。



「途中まで強い冒険者さんと一緒に来たんです。強い冒険者さんは、まだ狩りを続けるみたいで、僕一人になったんです。」



少し疑われたような気もするが、笑顔で入国を許可してくれた。



「ようこそ、トルマリン王国へ。」

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