003 先人

「テラーは必要悪だったのかもしれん。


…誤解せんでくれよ。ジュエルらがテラーを倒したことは正しいことじゃ。世界に平和をもたらした。


今起きている問題はすべて世ら各国の王の問題じゃ。我らの政治が引き起こした問題じゃ。」



国王とジュエルの表情がさらに曇る。そんな曇りを破るかのような声が響いた。



「陛下、緊急事態であります。入室のお許しを。」



国王が許しを出すと、恰幅かっぷくの良い中年の男性が飛び込んできた。オパール王国の外務大臣である。



「陛下、一大事であります。サファイア王国がエメラルド王国に宣戦布告せんせんふこくしました。」



平和が終わった瞬間だった。ジュエルは心拍数が上昇しているのを感じていた。一方の国王は、外務大臣の報告を受け、何かを決断したようだった。



「ジュエル、についてまいれ。大臣は対策会議を設置するのじゃ。」



国王の一言で、大臣は部屋を飛び出した。国王はジュエルを連れ、国王執務室へ向かう。執務室に入ると、国王は王冠を外し、机の上に置いた。すると、床の一部が開き、階段が姿を現した。



「陛下、この階段は。」



ジュエルの質問には答えず、国王は階段を降り始めた。


階段を降りると、そこには扉があった。金色の扉。数メートルはあろうかという巨大な扉。中心には九つの穴が開いている。一つには宝石が埋め込まれているが、他は空だ。



「ここはまだ世界が九つの国に分かれる前、偉大な先人らによって作られた部屋じゃ。中にはが保管されていると伝えられている。伝承によれば、それは平和をもたらすものじゃ。



何が保管されているのか、も知らぬ。しかし、これに頼るべき時がきてしまったのじゃ。余の力が足りぬゆえじゃ。余がおろかでなければ、先人の力に頼る必要はなかった。」



国王はそんな言葉をつぶやきながら、埋め込まれていた宝石を取り出した。



オパールじゃ。


これをジュエルに託す。



この扉を開ける方法はただ一つ。九つの宝石をすべておさめることじゃ。伝承によれば、九つの宝石は世界の各地に封印されている。万が一にもテラーの手に渡らぬようにとの対策じゃ。


真理のオパールは、残りの八つの宝石に近づけると、光り輝くとされている。


ジュエル、そちへの依頼じゃ。残り八つの宝石を見つけてほしい。無論、我が国は協力を惜しまぬ。ただし、テラーと戦ったときのように、すべての国からの協力は得られぬじゃろう。悲しいことじゃが、世の中には乱世を望む者もおる。


勇者パーティの仲間は既に各国の要職についたそうじゃ。協力は求められぬ。いかなる困難が待ち受けているのか、想像もつかぬ。しかし、ジュエル、そちにしか頼めぬのじゃ。この通り。」



陛下が頭を深々と下げる。



「わかりました、陛下。顔をお上げください。」



こうして、ジュエルの新たな冒険が幕を開けた。

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