第7話 墓地にて(表)
「キャー!」
突然の叫び声が墓地に響いた。学の前に腰を抜かしている女子高生がいた。
「沢田か。こんなところで何をしているんだ?」
「う、後ろ! ジェ、ジェイソンが!」
茉莉果が恐怖の表情を浮かべ、学の後ろを指さした。
「後ろ?」
学が振り返るが、何もいない。
「お前、頭大丈夫か?」
学が冷たい口調で問い詰める。
「う、う、う、後ろー!」
茉莉果は失神寸前だ。
だが、学が振り返ると、やはり何もいない。ふと、学が茉莉果が投げ出した鞄に目をやると、そこには『ムー』が入っていた。
「お前、高校生にもなってまだこんなん信じてるのか?」
「し、信じてないわ。た、ただの趣味よ」
呆れた学が座りこんだ茉莉果の横をすり抜け、立ち去ろうとする。
「た、助けて。こ、腰が抜けて動けない」
学の背に涙声がかかった。
――違法ドラッグによる幻覚だな。全くこんな田舎町まで汚染されているとは嘆かわしい。こいつと一緒にいたら、俺まで薬中扱いだ。
「お願い、助けて! ジェイソンが、ジェイソンが!」
助けを呼ぶ声を無視して、学は歩き続ける。
「ムーは信じなくていいから、ジェイソンは信じてー!」
――俺は、どちらも信じない。
「キャーーーーーーーーーーーーーーーー!」
ひときわ長い叫び声が墓地に響き、そして、静寂に包まれた。
――やっと、静かになったか。
そう思った学の鼻が血臭を感じた。頭で理解するよりも早く体が反応し、思わず学が振り向く。
しかし、そこには何もなかった。腰を抜かしていた茉莉果の姿も。そして、茉莉果の存在そのものも。
学が振り返ったのは、墓地を一歩出た場所だった。
いったい、なんで振り返ったのだろう? そんな疑問が学の頭を一瞬よぎったが、すぐに気のせいかと思い直し、学は家路へと歩みを続けた。
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