第6話 墓地にて(裏)
「兄ちゃん!」
「しっかりして!」
「だ、大丈夫、かすり傷だ。まさか、カマイタチを
学の放った枯葉により、カマイタチ長男の首が危うく一刀両断にされるところだった。
「口ほどにもないっつーの」
「やはり、一筋縄ではいかない」
幽霊女とサトリが去っていく学の後姿を残念そうに見つめる。
「このままだと、もうすぐ、あいつ墓地を出ちゃうっつーの」
幽霊女が悔しそうに、地団駄を踏んだ。
「よし、最後の手段だ。ジェイソンを呼ぼう」
「ジェイソン!?」
「ジェイソン!?」「ジェイソン・ボーン!?」「JSON!?」
カマイタチ弟らは世代が違うようだ。
「ジェイソンなんて、外妖じゃないの!」
「ここは俺たち和の妖怪の場所だ。だいたい、あいつは妖怪なのか? ただの殺人鬼だろう?」「外妖反対!」「日本の妖怪の雇用を守れ!」
普段は仲の悪い幽霊女とカマイタチ兄弟だが、サトリの提案へ声をそろえて異議を申し立てた。
「冷静になれ。我々だけであの男の魂を奪うのは無理だ。妖怪への恐れは認知度によって変わる。すでに今の世では、サトリやカマイタチよりもジェイソンの方が認知度が高いことは認めざるを得ない」
「ぐっ」
カマイタチの長兄が、不都合な事実を指摘され黙り込んだ。
「幽霊女は認知度は抜群だが、彼には幽霊女の心理攻撃は通用しないことは証明済みだ。彼を倒すには物理攻撃しかない。ジェイソンには、たとえ彼が信じていなくとも一撃で倒す戦闘力がある」
「でも」
「でも、じゃない」
納得のいかない幽霊女を、サトリがたしなめた。
「お前たちも本心では、ジェイソンの力を借りるしかないことはわかっているはずだ。私の前で心を偽れないのは承知しているだろう」
「……」「……」
サトリの一言に、グーの音も出ない。
「それに我々だって、元をたどれば海外にルーツを持つものは多い。この国に住み着いたのが早いか遅いかの違いだ。妖怪に和だの洋だの言っても始まらない」
「でも、まだジェイソンが妖怪か人間かの問題が残ってるっつーの」
「妖怪だ」
幽霊女の疑問にサトリが断言した。
「たしかに第5作までは、一見不死身に見えるがただの殺人鬼だった。だが、第6作で殺されて蘇るという儀式を経て妖怪になった。お前は途中までしか観ていないから知らないだけだ」
「だって、毎回同じ展開だから飽きちゃって……」
妖怪女の声が小さくなる。
「とにかく、13日の金曜日の今日を逃せば、次に召喚できる機会はずっと先になる。四の五の言わず、やるぞ」
「わかったわ」
「あいつに目にもの見せてやる」「イエッサー!」「ラジャー!」
敵の敵は味方という、人間も妖怪も関係ない世界共通の真理により、皆の気持ちが一つになった。
「我ここに願う。ジェイソンよ、降臨せよ!」
サトリが天に向かって叫んだ。
「皆も呼べ! ジェイソン!」
「ジェイソン!」「ジェイソン!」「ジェイソン!」「ジェイソン!」
サトリの祈りに皆も唱和する。
「声が小さいぞ! もっと大きな声で!」
「ジェイソーン!」「ジェイソーン!」「ジェイソーン!」「ジェイソーン!」
妖怪たちの声が墓地に響く。
「もっとだ! もっとだ! 心の底から叫べ!」
「ジェイソーーーン!!」「ジェイソーーーン!!」「ジェイソーーーン!!」「ジェイソーーーン!!」
妖怪たちの声が墓地を轟かせ、天は願いを叶えた。
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