再びダンジョンへ5

「ドロップは・・・これ武器?素材?」


弾き飛ばされた剣がそのまま消えずに落ちていた。今までに装備が掠種から直接ドロップしたことは無かったため判断が付かない。


「とりあえず装備できるか見てみようか。」


そう言ってエルが装備していた剣をインベントリに戻し、落ちていた剣を拾い上げる。


「なにこれおっも・・・。あ、STR足りないから装備できないってさ。一応装備っぽいよ。」


目算で刃渡りだけでも1.5メートルはありそうだし全長なら2メートルは超えているであろう剣だ、相応の重量があって然るべきだろう。


「うちにはそんな大剣使う人いないよね。」


「メイト、持ってみるか?」


「無理無理~、私が潰れちゃう。」


フェルズは弓と拳だし、ストレは短剣だ。俺は一応直剣を使ってはいるが、機動力の方を重要視しているため片手で振れるものしか使わない。エルも同様に片手だ。


「なら売るか、もしくは作り直してもらうしかありませんね。」


「材質は・・・わかるか?」


「うーん、鋼じゃないようだけど、詳しくはわからないわね。鍛冶屋で聞くしかないかな。」


一先ず今は一時的にエルのインベントリに仕舞ってもらい、後程確認に出すこととした。


「で、さっきの攻撃ってなんだったの?」


「アニムスですね、心力を矢として撃ち出したんですよ。割と馬鹿に出来ない量を持っていかれるので連発はできませんが。」


「弓?矢?」


「弓です。使ってみます?」


「いや、僕はいいよ。どうせ使えないだろうし、無駄に消費するわけにもいかないからね。」


これから先に進むというのに、徒に消耗することも無いだろうし俺も辞退しておく。


「回復したか?」


もしかしたらあの騎士のようなやつがこれから雑魚として湧いてくるのなら、攻撃手段がかなり限られるため消費が多くなってしまう。特に心力の回復は薬ではなく『心核』と言う、心力の詰まっている石から吸収することでしか回復できず、割と高額であまり数が用意できていない。その為、物理攻撃が通らない敵が出るたびにフェルズとメイトにのみ負担が行ってしまう。

また、今回は相手から攻撃こそ受けなかったが、あの重い剣が俺に当たればほぼ即死だろうし、エルでも受け止められるのか微妙なところだ。戦闘の度に即死攻撃を回避しつつ確実に攻撃を当てなければならないのは精神的な疲労が厳しい。


「さて、この先どうする?」


「一体なら戦っても良いと思うけど、二体同時とかなら難しいと思う。多分私の術だと凍らせられないし・・・。」


「二体同時に相手にしながら各個撃破は難しいと思うわ。連携を取らないとも言えないし。」


「では、あれが二体以上出てきたら撤退という事で。」


「一応俺の依頼メニューから撤退は可能だが、戦っている最中には厳しいな。その時はメイト頼むぞ。」


「任せなさい!眼鏡よりも働く!」


んふーと鼻息を荒くして宣言する。


「なら5分ごとに支援してくれないと追い付けないかな。」


「そんなにかな!?」


「ま、メイトとフェルズだと求められてる役割が違うからね。いざと言う時に動ければそれでいいよ。」


「そういう事だ。進むぞー。」


「おー!」



「おー!?」


「また狼かと思ったけど、まさか狼に猿が乗ってるとはねぇ・・・。」


あいつらに協力する知能があるとは思わなかった。種を越えても通ずるものがあるんだなぁ。

本来なら暢気に構えている場合ではないが、先にいる掠種はこちらに気付いていないのかこちらに背を向けてゆっくりと歩いて行ってしまった。


「まさか哨戒か?」


「獣の姿を見て勝手に知能が低いと考えていましたが、よくよく考えるとコマンダーの命令に従うのですからある程度はあると考えるべきでした。」


「もしかするとコマンダーの上位とかもいるのかな。いや、アレ見る限りいるんだろうねぇ。」


今回のダンジョンボスはそいつなのか?人間並みの知能があるのであれば遠距離攻撃にも対策してくるだろうか。


「とりあえずあれに気付かれないように追ってみよう。フェルズは気付かれた時に対応できるようにしておいてくれ。」


「どちらを?」


「機動力。」


「了解。」


弓と矢を取り出しながら頷いた。

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