再びダンジョンへ3
「冗談です。」
真面目腐った顔で平然とそう続ける。
「・・・本当か?」
「いえ、実はそこまで冗談でもありません。」
「どっちだよ・・・。」
「どちらにせよ僕の負担はそこまで気にしなくても構いませんよ。遠距離では心力、近距離では体力と別々の消費ですので。」
まぁ、その通りだが気疲れはするだろうに。それでもいいと言ってるならそれでいいか。
「なら基本臨機応変に頼む。」
「わかりました。」
「・・・それと、いつかで良いから本当のことを教えてくれよ。」
フェルズにだけ聞こえるようそういうと、口の端だけを上げて笑ったのだった。
◇
「さてさて、二度目のアタックを開始しようか。」
「ダンジョンに入りなおしたら最初からかと思ったが、そういうわけでもないのか?」
前回の脱出時にいた場所からのスタートだった。敵が現れる様子はない。
「いつものダンジョンだと、そもそもどこでも途中脱出出来るようになってないし、他の人とも鉢合わせたし特別製なのかな?」
「楽ならそれでいい。進むぞ。」
前回の続きを進んでいく。猿のような掠種には予想以上に苦戦してしまったため、奥に進めば進むほど強力な存在が現れるようになるのだろうか。不明ではあるが、そういう心構えで進めばあまり遅れは取らないだろう。
20分ほど歩き続けたが誰にも会わず、何も起こらなかった。
「何もないね?」
「僕たちだけが探索しているわけでも無いようですし、直前に誰かが通ったのでしょうか。」
「それで狩り尽くされたってことね。」
掠種は倒すと何故か一部のドロップアイテムを残して消える。そのドロップアイテムさえ拾ってしまえば余程の戦い方をしない限りは戦いの痕跡は残り難いだろう。
「ここまで一本道だったし、最初の分岐で外れ引いたかな。」
「外れも外れじゃないか。流石に一発目の分岐でここまでするか?」
「ある程度進んだら行き止まりとか、そもそも分岐はするけど途中で合流するとか、それくらいで良いと思うんだけどねぇ。」
「そういえば、このダンジョンはどのタイプになるんでしょうか。」
「どのタイプ?種類があるのか?」
「はい。一つの広大な迷宮の場合もあれば、小さな迷宮が複数層重なっているものもあります。」
「階段で繋がっているような?」
「そうですね。他にも塔型もあるらしいですが、僕は入ったことがありません。」
「迷路と、下に降りてくのと、上に昇ってくの?」
「その認識で合っていると思います。」
「一応他にもあるらしいわよ。」
「へ~、どんなの?」
「詳しくは知らないけど、巨大な掠種が潜んでいるダンジョンは巨大な部屋が一つだけで構成されているらしいわ。」
入った瞬間ボス部屋からスタートするような感じか。確かに先に出た三つとは違うともいえるが、一つ目の亜種とも言えなくはない。
実際にどうなのかは分からないので憶えておくに越したことはないだろう。
「それで、その掠種って倒せたの?」
「分からないわ。戦った記録はあったけれど、その結果についてはどこにも。」
「国の闇かな。」
ザリッ
「ん?」
ザリッ・・・ザリッ・・・
「何か聞こえる・・・足音か?正面だ。」
前衛二人が直ぐに武器を抜けるよう構えながら待機する。足音はゆっくりと、しかし確実に近づいてきている。
メイトが放っている光球の範囲に入ってきた
「・・・あなたは敵か、それとも」
そこまで言ったとき、目の前の騎士は背中に背負った剣に手をかけた。
「エル!」
どうやって抜いたのか、騎士はそのまま剣をこちらに・・・エルに叩きつけるよう振るう。
鋼と鋼がぶつかり合う甲高い音を出しながらも、エルはその場から動くことなく受け止めて見せた。
「お・・・っもいけど・・・ギリギリ!」
「よし!」
正面のエルに向け疾走、跳躍、肩に足を掛けて再度跳躍。騎士の上を飛び越えながら首筋に向かい天地逆さに剣を振りぬく。
手応えは無かった。
「外した!?」
「いえ、
一撃で終わらせるつもりだったため、騎士を挟み孤立してしまった。
それがこちらを向く。逆に考えるんだ、俺がこっちで生きてる限り常に挟み撃ちにできるんだ。
「攻撃は任せた!」
俺は生き残ることだけを考える。
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