敗北の条件
「よし、ダンジョン探索準備は終わったな。」
装備の修復もアイテムの補充も、一先ずは今の手持ちで問題なかった。
しかし、やはり今後のことを考えると心許ない。
「これ、クリア時じゃないと報酬は出ないのか?」
受注中の依頼から詳細を確認すると、ダンジョンからの脱出時では無く一日の終わりに途中清算が自動で行われるらしい。報酬額はパーティーメンバーに等分だ。
「という事らしい。今足りなくなることは無いと思うが、明日からの活動は今日の報酬次第だな。」
「いやぁ、可能な限り倒した方が良くない?」
「今回のような相手ばかりなら負けることもあるでしょうし、そうなるとマイナスがかなり大きくなるので考えるべきでしょうね。」
「僕たち全滅したことないからわからないんだけど、どうなるの?」
「基本的にダンジョン内でのドロップは全て没収。一応インベントリではなく手持ちのポーチに移しておけばそのままですが、あまり数は入りませんしかなり良いものが出たときくらいですね。それともちろん装備の破損判定が出ます。こちらは死亡時に装備していたもののみのようですので、直前に外せばそこまで痛くはありません。」
「それでも戦闘中に、しかもHPが危険なのに冷静に装備外して・・・なんて無理だろう。」
「えぇ、ですが覚えておくと間に合うならば被害は最小限に抑えられます。まぁ、そちらに気を取られて更にマイナス・・・となる可能性もありますが、お二人なら問題ないでしょう。」
「よし、俺が危なくなったらエル頼んだ。」
「いやいや、僕の装備の方がお金掛かるんだから、アルが引き付けながら装備外してよ。」
「それと一つ訂正しますが、HPの全損は死亡ではありません。」
「あん?」
初耳だ。普通ゲームと言うのはHPなり体力なり呼び方は様々だが、それが無くなれば負け、死亡なのではないのか。
「じゃあどうなれば死ぬんだ?」
「HPが無くなった状態で致命傷を受けること、ですかね。」
「致命傷ってまた曖昧だな。心臓を刺されるとかか。」
「首を飛ばされたり?」
「明らかに死んだと思うような攻撃でしたら大体死にます。多分、肩や足を棒で殴られるなどのおかしな死に方をさせないためだと思います。」
「それなら確かに納得だ。ゲームとしては正しいのかもしれないが、入り込んでる時にそんなことで死んだら萎えるよな。」
「場合によっては何かの角に小指ぶつけてとかもあり得そうだしね。それで死んだらプレイ止めるよ。」
「これももしかすると一つの世界であるからかもしれませんね。」
「そうだな。それで、他に死亡時のデメリットは?」
「一定期間の状態異常付与です。ステータスの減少と、入手経験値の半減が半日続きます。負けてすぐに再度挑まず、きちんと準備を整えろってことだと。」
「納得だね。」
近接職は装備の修理費だけで首が回らなくなるな。
「けどこれ最悪詰むんじゃないのか。特に装備も金も少ない状態で死んだら使える装備無くなるだろ。」
「あ、初期装備だけはリスポーン時に完全修復されるので問題ありません。」
なるほど、詰み対策は流石にしているか。それで簡単な依頼をこなして修理しろと、初期装備が完全に不要なら金は何とかなるだろうし、良いバランスなのだろう。
「ん、そういや全損したHPは回復できるのか?」
「特定のアイテムならできるようですが、普通の回復薬ではできません。」
「メイトちゃんは?なんかそんな術ないの?」
「私は覚えてないかなぁ。今有る回復には"全損していないHPを回復"って書いてるし。」
「うーん、やっぱりそうだよねぇ。少なくとも序盤中盤で何とかできるようなものじゃないかぁ。」
「大体そういうのって終盤の町とかで普通にお店に売ってたりするよね。」
「わかるわかる。」
「みんなお待たせ。やっと装備の修復終わったわ。」
ストレが戻ってきた。多数の装備を入れ替えつつ使う戦闘スタイルのため、その分修復をする数が多かったのだ。
「費用は足りた?」
「一本一本が安いから、多分総額はみんなと同じくらいよ。」
「それならよかった。一人だけ出費が多いなら配分を考えないといけませんからね。」
「そんなことしなくて良いわよ。」
「良くないよ~。そういうのって積み重なるとギスギスしちゃうからね。」
「仲間とのギスりは解散の原因になるぞ。だから、もし何か不満があれば直ぐに言ってくれよ。」
「それなら僕から一つ。フェルズに戦力比重が偏りすぎてるかな。遠近対応できるのは強みだけど、それだとどっちにも出動しなきゃならないから休みが無いよ。」
「それは気にしなくても。」
「いや、俺もそう思うぞ。大変だろう。」
「いえいえ、本当に大丈夫です。何せ、敵を潰すのが楽しくて楽しくて、それでどんな状況でも攻撃できるようにビルドしたので。」
「えっ。」
えっ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます