存在
いつの間にか俺がメインとなって話を進めてしまっていたが、それで良いのだろうか。とは言え他に誰も発言しないし、一先ずはこのまま締めてしまおう。
「まぁ待て、今の俺たちにどんなものを示したところで、それが俺たちを騙すためのものではないとどう証明するのか。」
先程までの話がどこまで真実なのかわからない上に、先に受けていた情報を完全に否定するもののため慎重にならざるを得ない。
「とりあえずここまで俺が進めてしまっていたが、この先の決定は俺一人でできるものではない。その証拠とやらを見る前にこちらでも意思の統一をしておきたい。」
「わかりました。では終わりましたらお呼びください。」
そう言うとクラビは現れたときの逆再生のように光になって消失する。
「さて、俺は何が何だかもうわからない。誰か何か意見してくれ・・・。」
「いやぁ、流石に誰もわからないんじゃないかなぁ・・・。僕は途中から半分くらい聞いてなかったよ。支離滅裂ってわけじゃないけど、こっちに情報が無いのを前提に畳みかけてきてて詐欺師の手口っぽかったし、聞く価値はそんなにないかなって。」
正直俺も同じ意見だった。何を提示しても理解してもらえるだろうという自信が声に現れていたのもマイナスポイントだ。
「嘘ではないが理解してもらえるだろうと信じ切っている感じが気に食わない。それならまだ最初に説明をしてくれた男の方が信用できる。」
「言ってしまえば誠意が足りてないと感じました。証拠とやらがどこまで信憑性のあるものかは見ないことにはわかりませんが、やはり個人的にも罠であると考えたうえでこの先を対処した方が良いと思います。」
「私は殆ど聞いてなかったんだよね・・・。ストレちゃんが心配でずっとそっち見てたから、どうするかは他の人に任せるよ。」
「・・・。」
ストレはずっと怯えているようだが、一体何に対してなのだろうか。
「なぁストレ、さっきからどうしたんだ?ずっと黙っているが、体調でも悪いのか?」
「・・・あたし、あんたたちが何を話してるのか全く理解できなかった。けど、ここにきてあんたたちを見ていて一つ直感したんだよ。あたしとあんたたちは違う存在で、あたしは多分あんたたちからしたら替えの利く・・・いや、そもそも同率じゃないんだって。同じ視点じゃない。あんたたちは、あたしよりももっと高い視点でこの世界を見てた。」
衝撃だった。ストレは俺たちと自分がどこか違うことを理解しているようだった。それは、最初に門の前で聞いた声の『壁を越えた』ってことなのだろうか。いや、そもそもPCとNPCの違いは何だろうか。そして、今脳に電極が刺さっているだけの俺たちは
「あ~~~~~~~~~~~~~~~わからん!多分俺たちとストレは少し前まで全く別ものだった!けど、今の俺たちがどうかわからん!前提が変わった!エル、フェルズ!俺たちはプレイヤーなのか!?生体コンピュータにされた今の俺たちが!」
「僕は正直どっちでもいいかなーって。この先楽しければそれでいいよ。」
「僕は・・・僕が人間だと思わないと多分壊れてました。いえ、今でも人間だと思ってますけど。けどそれはそう思えている自分がいるなら真なんだって考えるようになって、それなら僕とストレさんは多分同じなんだと思います。」
「メイトは・・・なんかそんなこと考えてなさそうだな?」
「いやいや、私だって色々と考えてますよ!けど、ストレちゃんが
「そんなこととはまた大きく出たな。」
「だってさ、ちょっと視点が違うくらいで大げさじゃない?そもそも誰だって視点は違うんだし、そんなの考えたところで無意味じゃん?それなら、そういうもんなんだーって受け入れてから付き合いを考えればいい話じゃん。」
「・・・メイト。」
「ね?ストレちゃんはそんなことでさ、これ終わったら私たちとは縁切ろうって考える?今までの付き合いも全部無視してさ。」
「それは・・・無いと思うけど・・・。けど、あたしとあんたは違う存在で・・・。」
「それなら私とアルさんだって違うよ。大なり小なりみんな違うけど、それでも一緒にいられるでしょ?見た目だってそんなに違わないし、言葉だって通じるし考え方も大体一緒。ならそれでいいと思うんだけど?」
「・・・そんな簡単に割り切れるものじゃないけど、それでも、もう少しだけ前を向いてみようと思う。」
「まずは少しで良いと思う。一歩一歩進めて行こ?」
メイトはストレに対して特攻でも持っているのだろうか。今後も任せて行こうか。
「さて、多少脱線したが今は後の事だ。俺はとりあえずその『証拠』とやらを話半分で確認する程度でちょうどいいと思っている。」
「僕も同意見です。もし本当に天地がひっくり返るような情報なら、その時に改めて考えましょう。」
「だね、考えと心構えは共有できたし、さっさと先に進めちゃおうか。クラビさーん、こっちは終わったよー。」
再度光が収束する。さて、どんなものなのか確認させてもらうとしようか。
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