再スタート
村の外でエルと対峙する。
「とりあえず何もなしで一度やってみようか。」
「そうだな、動きながらステータスの配分を考えないと。」
「あんまり長くやっても意味ないから、一撃当てられたら終わりってことで。当てるって言っても寸止めでね?」
「わかった、それでやろう。」
「よーしいつでも来い!」
「行くぞ!」
剣を片手に走り出す。エルが盾を構えるが、構わずに下から剣を振り上げ盾にぶつけに行く。
STRが高くないせいか、苦も無く受け止められる。止められることはわかり切っていたため、反撃が来る前に後ろに下がり相手の攻撃が届かないよう移動、避けられたエルは追撃のために更に一歩踏み出し剣を振り下ろしてくる。
「ここだ!」
AGIの性能に物を言わせ左に飛び、直ぐに右に再度飛びながら剣を刺突に構え相手の体の側面を攻撃しようとするが、エルも負けずと逃れるように飛びながら身体を回転させ盾で受け流される。
そのまま首に剣を当てられ、勝負ありだ。
「俺の負けだよ。まさかあそこから盾を合わせてこられるとは思わなかった。」
「うーん、これ多分スキルの効果なんだよね。僕はギリギリ間に合わないと思ったんだけど、タッチの差で間に合ったんだ。」
「何もなしじゃなかったのか?」
エルが勝つためだけにルールを破るとは思えないが、少し気になった。
「スキルって習得したら切れないっぽくて。僕もあの局面になるまでまったく気付かなかったけど。」
なるほど、使ったわけじゃなく切れなかったのか。
「なら仕方ないな。出来ないものはどうしようもない。じゃあ次は俺も心技を使って戦うから、もう一戦だ。」
「オーケー、次も負けないからね。」
最初と同じように距離を取って構える。
「来い!」
「おう!」
さっきの流れをなぞるように走り出し切り上げをする。受け止められ一度引き、左に飛ぶ。
「ここからだ!【加速】!」
MPを3消費し【加速】を発動する。右への切り返しが一瞬で加速し、エルが行動する前に横腹に剣を当てる。
「今度は俺の勝ちだな。心技ってのは凄いもんだ。」
「だねぇ。全然反応できなかったよ。」
「MP3で3秒間加速するだけで詰められるな。あとは、相手に速度を慣れさせたところで加速、それも一瞬だから反応も出来ないだろう。」
これは短期戦でも長期戦でも有用だな。瞬発力が上がるうえに剣を振る速度も上がっていたため、色々な場面に対応できる。
「それと、多分スキルの【反応】も効果を発揮していたように感じた。じゃないと、瞬間的な加速に俺自身もついていけないだろうし。」
「僕も【盾】が発動したときは何となくわかったよ。」
「・・・何度か聞いたが、多分『心力』ってのが関係してるんだろうな。それが心技なりスキルなりを動かしてるんだ。」
「なんだっけ、それが無いとそもそも旅人になれないんだっけ。」
「一定値以上ないとだったかな。それが心技、心術、スキルを覚えるのにも必須なんだろう。」
それと、まだ経験はないが死んだときの復活もだろう。エルも気付いているはずだ。
「そうじゃないとそもそも戦えないだろうからね。戦えないってことは受けられる依頼の幅も少なくなるから。」
「ま、強くなる方法はわかったから後は実践だな。心技、心術、スキルを覚えてレベルを上げて。」
「装備も揃えてだね。そのためにはやっぱり依頼を受けまくらないと駄目だぁ。」
「楽して強くはなれないわな。ひとつずつしっかりこなしていこうか。」
「まずは今回の依頼を完了報告してだね。」
「さっそく行こうか。」
村長の元へと戻り、報告に行くことを伝えてファストトラベルで最初の町へと帰る。
組合へと歩きながら、今後の方針を詰めていくのだった。
◇
◇
◇
「さて、もう最終日か、早いもんだ。」
「結局トップとかよくわからなかったね。基本情報交換が出来ないから他の人がどれだけ進んだのかもわからないよ。」
そう、昨日の夜に運営から通知が届いたのだ。
『明日の正午にテストを終了し、ログアウト処理を行います。強制処理となりますので、プレイヤーの皆様は戦闘行為等を行わずに待機していてください。』
「あっという間だったからな。そこそこ強くはなったと思うが、まだ先は全く見えないし本サービスが開始されたらまた再スタートしよう。」
「それまでに掲示板とかで情報交換もしたいね。なんなら、ログアウトした後で適当な人に声かけてごはんでも行こうよ。」
「それも良いな。他のプレイヤーがどこまで行ったのかも気になる。」
正午まであと30秒だ。
「それじゃ、後は現実で。病院入り口前で待ち合わせだ。」
「わかったよ。またあとでね。」
デジタル時計が12:00を示した瞬間、目の前が白い光で満たされた。
◆
「流石に一週間も寝っぱなしだと体バッキバキだな。暫くは運動しなきゃ駄目だぁ・・・。」
一人ごちると、目の前にアナウンスが流れた。
『順番に退室していただいておりますので、しばらくお待ちください。』
そりゃそうだ、百人規模が一斉に出たら多少なりとも混乱が起きてしまうだろう。
5分ほど待機すると、扉が自動で開いた。
『ご退室ください。』
さて、エル・・・城との待ち合わせは入り口だったな。待ってるかもしれないし、早く行こうか。
◇
「城、さっきぶり。」
「そうだね。七日ぶっ続けはきついねぇ。体が。」
「だな。んじゃ、適当に同年代っぽいのに声かけて飯行くか。」
「うん、あ、そこの人ー!君もテスター?・・・」
適当に同行してくれる人を5人ほど集め、食事できるところを探し始めた。
◆
光が収まったとき、最初に目に入ったのは見覚えのある石像と噴水だった。
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