心技と心術

村に着くと村長が話しかけてくる。


「突然亀裂が活性化した時は焦ったが、おぬしらが対処してくれたおかげで被害は一切出んかった。村を代表して感謝を。」


「いえいえ、依頼ですから。」


「正直に申し上げると、登録したばかりの旅人が二人と聞いたときは失敗を前提に対策を考えておったのじゃ。しかし実際に見てると、なんの危なげもなく殲滅しおった。おぬしら、一体何者なんじゃ?」


「私たちは新米の旅人ですよ。ただ、新米だからと言って弱いというわけではないでしょう?」


「僕たちは今までも二人で戦ってきましたからね。そこらの有象無象よりは強いと思います。」


「それよりも、見ていたとおっしゃられましたが、ここからですか?一体どうやって。」


「心術の【遠見】じゃよ。おぬしらもこの先必要になるじゃろうて、何なら教えてやろうか?」


ステータスの欄に心術と言う項目があったので習得できることはわかっていたが、方法はさっぱりだった。

どうやら誰かに教えてもらうことで覚えることができるらしい。


「ではお願いいたします。」


「僕も同じく。ただ、今日は疲れたので明日からでよろしいでしょうか。」


「それもそうじゃな、では村の宿屋で休むと良い。先にも言ったが、費用はこちらで持つのでの。」


「ありがとうございます。お言葉に甘えまして、休ませていただきます。」


宿屋への道を教えてもらい向かうことにする。

実際には特に疲れはないのだが、確認したいこともあるので落ち着ける場所へ行きたいのもあったのでエルに感謝だ。



宿屋に入ると、店主が話しかけてくる。


「旅人様ですね、お話は伺っておりますのでどうぞお休みください。鍵は旅人カードで管理されておりますので、ドアのスリットに挿していただければ登録できます。」


「ありがとうございます。少しゆっくりさせていただきます。」


旅人の登録カードって便利だな。ゲームシステム的な処理なんだろうけど、これ一つで何でも出来るのは楽な反面紛失した時が少し怖い。

ステータスの確認や装備もこれに登録されているようだし、もし他人に拾われたらどうなるのかも確認しておいた方が良いな。

とりあえず部屋をカードに登録し、エルの部屋へと向かう。


「エル、入れてくれ。」


「開けたのでどうぞー。」


中はベッドは一つに机が一つ、そのそばに椅子が三脚あった。


「意外と広いんだな。見た限りだとここも部屋の中と外で大きさが違うっぽいなぁ。」


「この世界のスタンダードなのか、ゲームの都合なのかはわからないけどね。で、心術を明日に回したのは今後の事を話し合うためだよね?」


「その通り。まず確認したいのは、このカードが他人の手に渡ったらどうなるかってことかな。俺のを渡すからそれで操作してみてくれ。」


エルにカードを渡し、メニューを開いてもらおうとするとカードが光になって消えてしまう。


「お?消えちゃったよ。これどこ行ったんだろう?」


それは何となくわかっている。右手でカードを指で挟むポーズを取るとそこにカードが現れた。


「消えたときになんとなく頭に流れ込んできた。んで、こうすると」


挟んだカードを投げる動作をすると指から離れたカードがまた光となって消える。


「これで紛失の心配は無くなったな。それでだ、さっき村長が心術を教えると言ってたが、心術の覚え方が一つ判明したのかな。」


「そうだね、まだ他にも方法はありそうだけど、低難易度の依頼がチュートリアル替わりと考えれば一番ポピュラーな習得方法が『誰かに教えてもらう』なんだろうね。そして多分これは報酬の一つでもあるんだろうね。」


「俺も同じ見解だ。他の可能性は・・・まぁそれこそその時になってからでいいだろう。もう一つ調べておきたいことがあるんだが、心技についてだ。心術が誰かに教えてもらうものなら、心技も同じような感じで習得できるんじゃないか?」


もしそうならば早めに色々と揃えておきたい。手札が増えるほどに戦いの安定性が増すためだ。特にエルが防御系の技を覚えられるのならば最優先事項となる。


「エルには早く堅くなって欲しいからな。じゃないと俺が死にやすくなる。」


「DPSが落ちると困るからね。やっぱ盾職は責任重大だ。」


「そうだぞ。じゃあ明日からは心術と心技の習得を優先事項としてだ、最後にスキルについてだ。」


一番謎なのはこの【スキル】だ。技でも術でもない、独自の枠でくくられており既に俺が一つ所持している。

まぁ使い方はわからないが。


「これについては全く情報がない。明日村長に聞いてみよう。」


そう明日の予定を話し合い、それぞれの部屋で休息をとることにした。

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