掠種との戦い
「あれが小型・・・?」
どう見ても大型だろ。
「亀裂の縦の大きさはあまり参考にならんぞ。重要なのは横の幅じゃ。いくら縦に大きくとも、幅が無ければそれ相応のやつしか通れんからの。」
どうやらそういう事らしい。
「そ、そうでしたか。小型だからと受けた依頼でしたので驚きました。」
「おぬしの故郷ではここまで大きいのは出なかったのかの?」
ここは話を合わせなければいけないところだな。
「え、えぇ、もっと小さいものでした。数も多くても5体くらいで。」
「僕のところも大体同じですね。地域によって差が激しいんですね。」
エルも合わせてくれた。世界の住人になり切るのはロールプレイとして今まで何度もやってきたことなので問題はない。
「ふむ。そういうもんかの。」
「ちなみに、今までもここまで大きなものが出現していたのですか?」
「わしが村長になった30年前はわしの身長くらいの大きさじゃった。じゃが、徐々に大きくなっていって、今はもうこんな大きくなってしもうた・・・。」
「それで、何か変わったことは?掠種が変わったとか、大きさが変わったとか。」
「数は少しずつ多くなってきましたな。最初は2体とかじゃったが、前回開いたときは12体じゃった。」
かなり増えているな。これが適正難易度なんだろうか?過去の作品でも受注者のレベルや装備でクエストの難易度が変わるものは多々あった。恐らくこれも同じなのだろう。トリガーはパーティーを組んでるか否かもありそうだ。
「では今回も最低でそれくらいは出てきますね。いつ頃出現するとかは?」
「わからんのう。亀裂が出現してから10分で出てきたこともあれば3日後に出てきたこともある。」
「そうですか、では一先ず村で食事でも・・・。」
パキッ
背後から何かが割れるような音が聞こえてきた。これはまさか!
「!今の音・・・やつらが現れる前兆じゃ!」
やはりか!もう少し情報を集めたかったが、出てきてしまったのなら仕方がない。
「エル!行くぞ!」
「あいよ。では村長さん、僕たちは行ってきますので。」
「頼みました。私は万が一に備え村の者たちに伝えに行ってきます。」
そう言いオストルは村の方へ向かう。
「さて初陣だな。スキルも何もない状態だけど大丈夫か?」
「さぁ?なるようになるでしょ。」
なんとも気楽なやつだ。まぁ俺も同意見だがな。
結局戦闘システムなんてやって慣れるしかないのだ。特にVRが普及してからはそれが顕著になっている。
過去のコントローラーを握ってキャラクターを動かすのと、自分で体を動かして戦うのでは全く違うからだ。
「剣を振ったのだってキャラクリの時だけだしな。何となくの感覚はつかんでるけど、どちらかと言うと回避の方が未知数で怖いところはある。」
「僕も攻撃より防御かな。ほら、盾から伝わる衝撃ってゲームごとにまちまちだから、攻撃を受けてみないことにはね。」
「俺は盾使ったことないからなぁ。っと、喋ってないでさっさと行くか。」
「そうだね、さっきからパキパキうるさいし、早く止めようか。」
亀裂に向かって歩き始める。こうやって出現位置の目印があるのは楽でいいな。そこに向かっていけば嫌でも敵がいるとわかるし、避けるのもまた同じだ。
「お、向こうからわざわざ来てくれたぞ。手間が省けてラッキーだな。」
あれが掠種か。
「見た目的には大型犬くらいの狼みたいだね。」
「まんま狼だな。その手のエネミーはさんざん戦ってきたから特に問題ないだろ。」
俊敏性の高い四足歩行キャラは三次元的な動きに気を付けていれば対処は簡単だ。いや、現実世界では無理だが。
攻撃方法は爪と噛み付き、あとは体当たりくらいか?
「全部エルで対処できるな。」
「アルが倒せば余裕だね。」
エルを前にし、斜め後ろを追うように走る。
「接敵!」
叫ぶと同時に、突っ込んできた狼の鼻っ柱を盾でかち上げる。
「隙!」
聞くか聞かないかのタイミングで加速し、狼の側面から首に向かって剣を振り下ろす。
一撃で頭が胴体から完全に離れ、動かなくなる。
「・・・なんだ、余裕だな。動きも目で追えるし、防御も簡単にできる、そしてレベル1の俺でも一撃で倒せる。」
「盾から伝わる衝撃もそんなに気にならなかったよ。こいつが軽かったってのもあるけど、鎧がかなり吸収してくれてるみたいだ。」
その時、倒した狼が黒い煙を上げて消えた。残ったのは牙と爪のようなものだけ。
「アイテムは剥ぎ取りじゃなくドロップ方式みたいだね。ありがたく頂こうか。」
「それと、エネミーを倒してもお金はドロップしないのか。ランダムドロップって線もあるが、もし落ちないなら依頼を受ける呪重要度が上がるな。何もできなくなる。」
「そうだね。・・・お、また来たよ。次は狼2体だ。」
「じゃあいつも通りの手筈で行こう。」
その後特に問題もなく、俺たちは12体の狼を狩り尽くした。
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