-11

意識が浮上する。

白い空間に立ち、目の前にはゲームのウィンドウが表示されている。


「【NEXT GENERATION】・・・これがタイトル、だから略してNGか。それにしても次世代ってどういうことだろう?やってみればわかるだろうか。」


そう考えNEW GAMEを選択する。キャラクタークリエイト画面に移行すると、デフォルトでは自分の顔が表示されているが、流石にゲームの中でも現実の顔と言うのは少しやる気が削がれる。チップに保存されているクリエイトを呼び出せるかUIを確認すると、問題なく使えるようだ。5割増しで美化されてるが逆に言うと顔から自分だとバレることも無いだろう。

プレイヤーネームも同時にセットされる。


【アルフィル】


もう何年使っているかわからない名前だ。


「城なら一目でわかってくれるはずだしな。」


キャラクリはすぐに終わった。

さて次は・・・


「ジョブ選択・・・よくあるパターンだな?」


目の前には戦士や盗賊などの名前が・・・4つだけ表示されている。


「え、いや、流石にこのご時世初期ジョブが4つって少なすぎないか?戦士、盗賊、心術師、弓術士・・・前者二つが近接で後者二つが遠距離か?心術士ってのは多分魔法使いのようなものだろう。最低限の物はそろってるが、逆に言えばマジで最低限しかないな・・・。」


とりあえず戦士を選んで次へと進む。


「おっ、装備が変わった。これが初期装備か。数値とかはよくわからないが、強くはないんだろうな。」


右手に剣、左手に盾、胴と足には何かの革でできた防具が装備されていた。


「んー、剣が重い。こんなもの振るって攻撃なんてできないぞ。」


と考えたところで目の前にまたウィンドウが表示された。


「あぁ、ここで初期ステータスを割り振りするのか。まぁこの状態でほっぽりだされてもすぐ死ぬだけだしな。」


ウィンドウには



HP:100

MP:30

STR(筋力) :10

INT(知力) :10

DEX(器用さ):10

VIT(生命力) :10

AGI(敏捷) :10


残りSTポイント:50



とあった。


「とりあえずSTRに振ってみるか・・・。」


STRを15に振ってみると、明らかに右手に持った剣の重さが軽減された。


「おお、筋力補正は馬鹿に出来ないなこれ。とりあえず全部極振りしてみるか。」


STRの場合、ある程度振った時点からあまり違いを感じなくなった。

INTの場合、平時との違いがあまり感じられなかった。若干頭の回転が良くなったか?程度だが思い込みかもしれない。

DEXの場合、一番違いが分かった。自分の頭で思い描いたように体が動かせる。

VITの場合、体の表面に何か層が発生した。これが防御なのだろうか?


最後にAGIの場合。これが一番の問題だった。


「死ぬかと思った・・・これはまずい・・・。」


ちょっと走ろうとしただけで動きが異様に高速化され、全く体を操作できなくなってしまった。


「これは流石にバグでは・・・?管理者への連絡ってどうするんだ。」


画面の端にコールマークがあったのでプッシュすると、すぐにつながった。


「はい、どうしましたか?」


「あの、今ステータス振りの画面なのですが、AGIだけに振ると正常に体の操作ができないのですが。」


「あ、あなたも気付きましたか。それに関してはヒントだけお答えしておりますのでお考え下さい。ステータスを振った際に、『体を動かした際にいつもと違う』と感じるものがあったと思いますが、そちらが重要になっております。」


STRかDEXかVITだな。多分直結するのがDEXで、それを上げないと自分の意思で体を動かすことができなくなるのか・・・。


「あー、なんとなくわかりました。挙げた敏捷を器用さで補わないと頭と体の連動が上手くいかないんですね。」


「回答は控えさせていただきますが、試していただけるとわかると。」


この声色はおそらくほぼ正解だが、何かが足りていないようにも感じる。


「ありがとうございました。また試してみようと思います。」


そう言い通話を切る。DEXとAGIはバランス良く上げないといけないわけで、初期ステータス振りの傾向は限られてくるか?少なくとも速度の極振りは可能だが、火力を限りなく抑えなければならないため序盤はかなり厳しくなるだろう。


とりあえず自分の振り方を考える。まずリセットしたステータスからAGIをどこまで振っても問題ないのかを調べたところ、21振ったところで動作に違和感が出始めたので、DEX1に対してAGI3までがライン・・・とそこまで考えて、まだ何かありそうだったのを思い出した。確認のためにVITを1だけ上げてみたところ、違和感が無くなった。


「VITも何か関係あるのか?流石に意図まではわからないけどどう計算されてるかだけは確認しておこう。」


5分ほどで確認は終わった。AGI<=DEX*2+VITが成り立っている限り違和感は生じなく、高速化された動作も思った通りに動かせるようになった。


「これ気付かないとかなり厳しいだろ・・・キャラクリの時点で落とし穴があるとか流石に不親切が過ぎないか?俺だって確認のために極振りしなきゃ気付かなかったし、上から何となく振ってたら気付かずに始める人も多そうだ。」


そうぼやきながら初期ステータスを確定させる。


HP:150

MP:30

STR(筋力) :30

INT(知力) :10

DEX(器用さ):10

VIT(生命力) :20

AGI(敏捷) :30


残りSTポイント:0


バランスよく振ってみた。剣は片手で軽く扱えるようにし、そこそこの素早さで一撃離脱を繰り返すスタイルで行くことにした。DEXに振り正確性を上げようかとも考えたが、事故で攻撃を受けたときに備えVITに振った。


「よし、多少動いてみたがなかなか悪くない。これで確定っと・・・ん?。」


最終確認画面に表示されたステータスには、



PN :アルフィル

JOB:軽戦士


HP:150

MP:30

STR(筋力) :30

INT(知力) :10

DEX(器用さ):10

VIT(生命力) :20

AGI(敏捷) :30


と表示されていた。


「戦士が軽戦士になってる。これ初期ジョブは傾向の選択だけで、ステータスによって現在ジョブは動的に変更されるのか?多分スキルとか魔法みたいなのとかもこの傾向次第で覚えやすいとかあるだろうし、結構頭使うゲームだな。」


ともかくこれでようやくスタートだ。ここから一週間、この先の世界で生活することになる。前知識も全くない状態だが、その方がゲームは楽しめるだろう。


「よし、行くか!」


俺は、力強くゲームスタートを選択した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る