第6話 女 Love,

 彼が、爆弾をキャッチする。


「助かるよ。これで街は護られた」


「ずっと、わたしのことを張ってたの?」


「ああ。俺は教祖の息子なんでな。親の尻拭いをせにゃならん」


「わたし、教祖には会ったことなくて。親が信者だったんだけど」


「俺の親はな、暴対特別措置以降の街の犯罪者の受け皿として、とりあえず宗教を立ち上げたんだ。結局最後は、にっちもさっちも行かなくなって。後を俺に託して死んだ。信者だったということは、おまえの親も犯罪者か」


「うん。洗脳されて育ったわ」


「そんな風には見えないがな。顔も身体もきれいなもんだ」


「洗脳っていうのはね。心の表面にあるものじゃないの。心の奥底の、一番大事な部分を、塗り替えられてしまうのよ。自分ではどうしようもない」


「生きる理由、か」


「そう。生きる理由。わたしにとっては、このばかげた宗教自爆に殉じることが、生きる意味であり、理由なのかもね」


「それはもう、なくなったな」


「うん。なんかもう、いますぐにでも死にたい気分」


「俺のことは、好きか?」


「好き。でも、それだけで自分を支えられるかどうか、正直分からないの」


「難しいな、生きる理由ってのは」


「あなた。ディスカッションで、わけの分からないこと喋ったでしょ?」


「あ、ばれた?」


「ばれたわ。いま」


「温室育ちのばかどもを、軽くけちょんけちょんにして来た」


「よくないわよ。平和のなかにいる人の心に波風をたてると、急におかしくなるんだから。無菌室に閉じ込めておきなさい」


「そうするよ。自分でもやりすぎだったと思ってる」


「わたし。これから、どうしたら、いいかしら」


「俺と付き合ってくれよ。とりあえず、そこからだ」


「じゃあ、キスして」


「いやあ、いきなりキスはハードル高いな。せめて、手を繋ぐとかにしてくれ」


「わかった。今日は、おててで、我慢する」


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