第2話 男 授業開始
「生きるのに必要ではないけど、ついやってしまうこと、か」
彼女の言葉。
間違ってはいないが、必ずしも、自分の人生に合致するわけではなかった。
教室に戻り。
「じゃあ、この学校を爆破するのが、あなたのやりたいことですか、と」
誰にも聞こえないぐらいちいさな声で、呟く。
倫理の授業が始まる。
倫理や道徳は好きだったが、授業は退屈でつまらないものだった。
教師は、要領に従って生徒に成績をつけなければならない。生徒は、なるべく良い点をとらなければならない。結果として、手軽な正解に教師も生徒も飛びつく授業が展開される。まるで、洗脳と同じだった。
ディスカッション前に、ひとりずつ生きる理由を軽く発表していく。最後に教師の生きる理由。
「家族がわたしの生きる理由です」
天涯孤独の人間に対してそれが言えるのかよ。
「幸せになるために生きていると思います」
そんなばかな回答を聞かされる俺たちが不幸だとは思わなかったのか。
「生きるために生きていると、僕は思います」
その理屈だと、おまえは死ぬために死ねるんだな。そんなんじゃ、命がいくつあっても足らねえだろう。
「自己実現こそが生きる意味です」
じゃあ老年に差し掛かってなおモラトリアム真っ盛りの
だんだんと。
気分が濁ってくる。
自分の番が来た。
しかたない。
たまには、いいか。
「俺の生きる意味は、他人を殺すことです」
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