『二朝二夕』

静菜「私の名前は塩谷静菜!どこにでも居る、普通の女子高生!!と言いたいところなんだけど、私には、誰にも言えない秘密があるの。それは……私が、サイキック、所謂、超能力者だと、いうこと……。私には、ものを木っ端微塵にする力があって、前はよく、力を制御できなくて、電柱をなぎ倒したり、窓ガラスを粉々にしちゃったりしてたんだけど……でもね!この学校での「とある出会い」が私の人生を変えたの!その「出会い」というのが……」

稀茶「前説終わった?」

静菜「前説って……『前回までのあらすじ』みたいなことだよ。私たちの関係性分からないじゃん。これから稀茶の話をするところだったんだけど」

稀茶「うーん、そういうのって話の流れの中でするものだと思うんだけど」

静菜「まあ、そう言われればそうだけど……。せっかくだし、自分で自己紹介したら?」

稀茶「お〜いいね〜やるやる。ハロー!!私の名前はキティ。みんなの人気者!!多摩センターで待ってるよ!」

静菜「うん、版権とか、そういうのは気を付けていこうか」

稀茶「いやわざわざ多摩センターから新宿まで文句言いに来ないって。文句言う人居たらこっちから出来たてのポップコーンお見舞いしてやる」

静菜「だからそういうのをね!やめようか!まあ、この子は斎藤稀茶。キティ……変な名前だよね……。キティもサイキックなんだ。能力は集団催眠。この子との出会いが私の人生を変えたの。ある時、力を制御出来なくてものをぶっ飛ばしちゃった時、たまたま通りがかったキティが集団催眠の力でそれを『なかったこと』にしてくれたの。その日から私は、力の制御をキティにも手伝ってもらって鍛えていって、キティとはサイキック同士助け合って普通の女子高生らしく生活していくことが出来てるんだ」

稀茶「で、前説終わった?」

静菜「いや、まあ終わったよ……そんなに急かして、何かあったの?」

稀茶「何かあったも何も大変だよ!私たちがサイキックだってこと、バラされるかもしれない」

静菜「え、なんで冒頭から急に……。キティの催眠はこの学校のみんなに効いてるはずじゃないの?」

稀茶「そりゃそうだよ、私は力制御できるもん。でもさ、さっき2年生の廊下がやけに騒がしかったからどうしたのかと思ったら、知らない下級生が急にてってってて向こうから来て『あの、私、この春転校してきた姫野瑠衣って言います。先輩ってもしかしてサイキックですか?よかったらお話したくって』って話しかけてきたの。絶対、何か企んでるよ。わざわざ私に言うんだもん。私たちのこと学校中にバラすつもりなんじゃないかな」

静菜「姫野瑠衣、って言った?」

稀茶「知ってるの?」

静菜「うん、2年2組にこの春から転校してきた子。それなのにもう2年生の間じゃ姫野さんの名前は知れ渡ってるし、話題も姫野さんのことばっかり。まだ4月に入ってそんなに経ってないのに、なんか不自然だなと思ってて」

稀茶「うーん……もしかして、私と同じタイプのサイキックなんじゃない?」

静菜「集団催眠を使える……ということ?」

稀茶「そう。多分、集団催眠を2年生全体に……いやもしかしたら私たち以外の学校全体にかけて、私たちのこと公にする準備してるんだよ」

静菜「ちょ、ちょっと待って。なんで集団催眠を使ったら私たちのことをバラす、ってなるの?」

稀茶「えっとね。私たちのことバラすとかバラさないとか以前に、発言力と説得力ってどこでも必要じゃん。でも、姫野さんは転校してきたばかりの後輩、私たちは先輩だから圧倒的に有利でしょ?だから、バラすってなった時のために外堀を埋めてるんだよ。時期に学校中の人が、私たちじゃなくて、姫野さんの方を信じるように」

静菜「そういうことか。それじゃあ大変だ……、どう説得しようか?」

稀茶「静菜ちゃんの力でさ、姫野さんぶっ飛ばしてよ」

静菜「え……なに急に」

稀茶「私がなかったことにするよ?」

静菜「……そういうのは、違うと思う」

稀茶「そんな悠長なこと言ってられないよ。私、この能力は知られたくない。誰かに悪用されたり白い目で見られたりしたくない。静菜ちゃんと一緒に、サイキックとして認め合える環境を壊したくない」

静菜「……そんなこと思ってくれてたんだ。ありがとう。じゃあさ、私が姫野さんにお話してみるよ。だって、姫野さんは「話がしたい」って言ってたんでしょ?だったらいきなり喧嘩腰になるのはよくない。それこそ、なにかの勘違いだった時にただの後輩いびりになっちゃうでしょ」

瑠衣「あ、あの……失礼、します。お話っていうのは……?」

稀茶「ああ、姫野さん。ごめんね急に呼び出して」

静菜「え、待ってキティ、もう会う約束取り付けてたの?」

稀茶「だって早く終わらせたいじゃん?でさ、姫野さん。なんで私がサイキックだと思ったの?」

瑠衣「えっと……あの……2年2組の教室で騒ぎがあった時、先輩が一目散に駆け付けてきたからもう他の学年まで騒ぎが伝わってると思ったんです。でも、先輩は『学校がボロボロなこと』じゃなくて『学校がボロボロなことにみんなが気付いていること』に驚いているように見えて……だから事情を知ってるのかなって」

静菜「え……学校がボロボロっていうのは?」

瑠衣「いやそのまんまですよ。この学校、廃墟みたいじゃないですか!2年2組なんて窓側の壁丸ごとないですし。でもみんな知らないみたいで……おかしいじゃないですか?」

静菜「なんで……?学校はこんなに普通だよ……?」

瑠衣「あ、えっともしかしてお二人共この学校の催眠にかかってますか?ちょっと待ってください、せえの、えい!!ほら、こんなに鉄筋むき出しなんですよ!おかしいですよね!?」

静菜「はは……まあ、サイキックでもないとサイキックの仕業だってまっさきに思わないよね……」

瑠衣「え、何のことですか?もしかして!!この学校をこんな風にしてるサイキックが居るんですか!?」

静菜「うるさいよ、私だってもうしんどいんだよ!!!力をそんな自由自在に使えたら!人生楽でしょ?楽でしょ???私はどんなに努力しても必死に制御することしかできないのに!!」

瑠衣「ま、まってください、まってください」

静菜「私たちのことみんなに言いふらしてどうするつもり?人のこと貶めてそんなに楽しい!?」

瑠衣「言いふらすって、わたし、そんな」

静菜「とぼけないでよーーー!!!!!」

稀茶「お〜!!豪快豪快」

静菜「あ……あ……今、私、我を忘れて」

稀茶「まあ大丈夫。私がなかったことにするから」

静菜「ねえ、稀茶」

稀茶「ん?どうしたの?」

静菜「稀茶、嘘ついたよね?」

稀茶「え、なんのこと?」

静菜「姫野さんの方からキティに話しかけに行ったみたいな言い方だったけど、姫野さんはキティの方から来たって言ってたよね……それに姫野さんは私たちがサイキックだってことも知らなかったんじゃないの」

稀茶「ははは、それ気づいたの初めてだね。全部なかったことにしてるから当然か。だって学校にいる間は注目浴びたいもん。でも静菜ちゃんの力の方が派手だからタダじゃ負けるかもしれない。だから静菜ちゃんとタッグを組んで敵にならないようにしてるだけ。二人で一つ、共同体として!!静菜ちゃん、ちょっと怒らせれば敵になりそうな人をぶっ飛ばしてくれるしなかったことにすれば私の思い通り。だからまたなかったことにするよ!」

静菜「させない!!許さない。私のことを弄んで。ちょっと人より優秀だからって!人のことを無碍にしないでーーーー!!!!!!う、うわ、ひ、ひい!!待って!!稀茶!稀茶!!!はやく!!はやくなかったことにして!!!学校が壊れるよ!!!稀茶ってば!!はやく!!!!!」


ってな感じで、その先輩たちは未だに私の催眠の中に居るらしいよ。


2021.3.25(土)

『恐怖✕学生芸人』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る