『崩壊悋気』

作:蜜売家偽薬、蜜売家りすく


「ねぇ……」

「?どうした?」

「これ。いつのゴム」

「い、いつって言われても……前のじゃないの」

「私生理終わったの昨日だよね。で、昨日はあんたの帰りが遅いから私は先寝てたから昨日のじゃない。だから前って言ったら1週間以上前になるんだけど」

「そ、う、だな……」

「1週間以上前だとしたら、ゴミ、捨ててるよね?」

「捨て忘れてたんじゃ」

「これ私の部屋にあったんだよ?」

「は……?」

「とぼけないで!!あんた浮気してるんでしょ!?私が寝てる間に!!浮気相手とやってたんでしょ!?」

「ちょっと待ってくれ、落ち着いてくれ」

「落ち着けるわけないじゃない!私の部屋にこれがあったってことは、今朝私が買い物に行くまでその浮気女はあんたの部屋にでも居たんじゃないの?それでその女は私に見せつけるように!!これを私の部屋のゴミ箱に捨てたのよ!!……ねえ、今なら許すことも考えないでもないわ、本当のことを言ってちょうだい」

「俺は、知らない……」

「嘘つかないでよ!!……もういい。全部見せてもらうから」

「あ、ちょ、ちょっと……」

「スマホ。暗証番号は?」

「……1212」

「……ふん。プロポーズした日をパスワードにしてるそのスマホで、浮気女と連絡してるのね」

「だから……」

「黙って。……LINEはしてないのね。随分周到だこと。カカオトークでもやってんの?」

「やってないよ……」

「まあ見る感じ確かにやってなさそうだけど……。じゃあ他に連絡手段は……あ、TwitterのDMか」

「ま、待って」

「図星か。あーもう信じられない!!TwitterのDM〜、っと。……は?何これ!!『今度はいつ会えるのかな〜?、今すぐハメられたい💖💖💖、ハッシュタグ欲求不満な人RT』……こんな分かりやすい出会い垢みたいなのとあんた浮気してたの!?」

「だからそれは!!」

「こんなさぁ……ツイートも下着姿の写真ばっか……って、え?これ……私のブラジャーじゃない」

「え」

「待って……これ全部……私の服……」

「……あのな、ゆっくり話そう」

「浮気相手に私の服着せてたの!?」

「だから話を聞いてくれって」

「信じられない、信じられない!!この写真の指輪なんて……婚約指輪じゃない!!指輪、この前直しに外したっきりなくなったの、あんたが持っていってたの!?持って行って、浮気女につけて遊んでたわけ!?信じられない!!」

「だから、落ち着いてくれって」

「どこで落ち着けって言うのよ!!こんなエロ垢みたいな女に旦那との生活を蹂躙されて!!もう、……もう婚約も、げっほ、破棄だか、ぐえっ!?ぐ、おぇ……、げほ、げほ……え……?」

「だ、大丈夫か……?」

「……な、何これ……何これ……?な、なんで。なんで。なんで?なんで!!なんで、指輪が、私から、出てくるの、な」

「…やっと気付いてもらえたかな?」

「……いやお前、さすがにゴム残したり指輪飲んだりは、やりすぎ、だって……」

「だって私はあなたの一番には絶対になれないのに、……この子は結婚してあなたとの幸せを掴むって思うと、ちょっと恨めしく……いひひ間違えちゃった。羨ましく思っちゃって」

「そ、そうか……」

「まあ、私は副人格なんで、もうこれ以上は出しゃばりません。こういう病気……えーと、解離性同一性障害っていうの、かな?そういうのに詳しい病院調べて、連れてったげて。で、ちゃんと治療したげてください。私はー、どうなるのかなぁ。まあ、消えるのかな」

「……うん……」

「もーおー!!そんな寂しそうな声出されると、そんなさ……嬉しいじゃん、もう。……ねねね、ベッド行こ。いいじゃん、最後かもしれないんだから。ね、いいじゃん、はやくはやく」


(ベッドに行く)


「(シーツ被る)じゃじゃーん。見て見てー、ウェディングドレスみたいでしょー、ヴェールみたいでしょー。ふふ」

「シーツ敷き直すの面倒だって、怒られるよ」

「奥さんの心配かぁ、でもいいじゃん。あなたは本物の花嫁姿の奥さんを見れるんだから。……ね、最後のお願い。手ぇ出して。ねえ、お願い。ハメて」

【追記】

2021.1.1

演:蜜売家偽薬

https://youtu.be/28uX0fWEkMA

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