第8話 俺の初デート②
魔女と別れて、俺たち当初の目的であるデートを再開した。
「ねえ、お金とか持ってるの?」
「一応この世界の通貨をサーニャ王女から少しだけ……」
「どうかしたの?」
「いや、俺の予想だと、この世界の通貨は、金、銀、銅で値段が分かれてるんだと思う。」
「続けて。」
「これも俺の予想だけど、銅貨1枚が100円、銀貨1枚が1000円、金貨1枚が10000円だと思う。」
「それで?」
「見てくれ、所持金は……」
ヒカリが貨幣の入った袋を覗いた。
「「金貨、20枚……」」
たぶん、日本円に換算して、20万円。
高校生の小遣いにしては、高すぎる‼
「どう、する?」
「どう、しようか……」
俺たちは迷った。正直、こんな大金使える気がしない。
「と、とりあえず、何か歩きながら食べれる物でも……あっ‼」
俺は、袋の中に、あるメモ紙を見つけた。
「ナニナニ、
『この世界の金貨は、大体、市場の一つの店の者全部買えるくらいだから、ギルドで換金してもらってね‼
サーニャより』だってさ。」
「ギルドってどこにあるのかしら。」
「どこかで聞いてみようよ。」
「じゃあ、あの果物屋さんに聞いてみようか。」
俺は適当に目に入った果物屋さんを指さした。
「じゃあ、そこでいいから行きましょうか。」
「お、おう。」
俺たちは目に入った果物屋に向かった。
「ありがとなー、また来いよー‼」
「すみません。」
「はいらっしゃい。お、おたくら新婚かい?いやー熱々で羨まし―‼」
「いや、まだ結婚してないですけど。」
「そ、そう、です。今後結婚する予定、なんです‼」
なぜかヒカリがものすごく照れていた。
「で、なんだい?何か買うのかい?」
「いや、少し道を聞きたくて。」
「どこに行きたいんだい?」
「ギルドに行きたいんですけど……」
「ああ‼ギルドなら、この道をまっすぐ行って次の角を左に曲がれば、すぐだよ。」
「ありがとうございます。また後で来るので、あとで何か買います。」
「あいよ‼あ、でも、無理はしなくていいぜ。この国では、人助けは、報酬をもらうようなことじゃないからな。」
この国、素晴らしい。
「わかりました。でも、俺の気持ちがお礼をしたいようなので、絶対来ます。」
「おう‼待ってるぜ、あんちゃん。」
俺たちは店を後にした。
俺たちは、店主に言われた通りの道をたどると、ギルドに着くことができた。
ギルドに入ると、冒険者や、依頼人、ギルド嬢などがいた。
俺たちは受付に向かった。
「いらっしゃいませ~。冒険者登録ですか?それとも依頼ですか?お食事であればお好きな席でどうぞ。」
「あの、両替ってできますか?」
「両替ですか。もちろんできますが?」
「じゃあ、これ、お願いします。」
俺は、金貨を一枚出した。
「はい、金貨1枚、ですねぇぇぇぇぇ‼」
「どうかしたんですか?」
「この金貨をどこで手に入れられたのですか⁉」
「い、いや、城を出るときに、サーニャ王女からいただいたんですが……」
「あ、あのサーニャ王女からの金貨。う、嘘ですよね。盗んだんですよね?」
「いえ、私がそれは保証します。私たちは、王女様から召喚された勇者のうちの一部ですから。」
「なるほど、それなら納得です。どの貨幣に換金しますか?」
「ところで貨幣の価値について教えてください。」
「はい。では、説明しますね。」
「お願いします。」
「まず、銅貨1枚でお食事1回分。銀貨1枚でパーティー1回分。金貨1枚はパーティ10回分ですね。」
「なるほど。では、銀貨9枚と銅貨10枚に……」
「まだ説明は終わってませんよ。王家の紋章入りの金貨は、」
「金貨は?」
「金貨10枚分になるんです。」
「は?」
「ですから、希少価値があるので、金貨10枚分なんです。土地買えますよ。」
「そ、そうですか。」
あの王女、なんて高価なもの持たせてるんだよぉぉぉぉ‼
「じゃ、じゃあ、金貨9枚、銀貨9枚、銅貨10枚でお願いします。」
「了解しました。少々お待ちください。」
「は、はい。」
俺たちは、近くにあったベンチに座った。
「おい、兄ちゃん。」
「……」
「無視すんなって‼お前を読んでんだよ、変な格好をしている兄ちゃんよぉ‼」
肩をつかまれた。
「何か用ですか?」
「いや、金があるんなら、一つ勝負をしないか?」
「勝負?」
「ああ。簡単なもんさ。」
「聞こうか。」
「ルールはシンプル。金貨をかけてやる諸部、男の醍醐味と言えば……」
「男の醍醐味と言えば?」
「腕相撲だよ。」
うわー、あるあるだよ。
こういう異世界の冒険者って腕相撲で勝負するんだった。
「わかった。その勝負、受けましょう。」
「ほ~お、度胸座ってんじゃねぇーか。」
「僕は今、この、王家の紋章入りの金貨しか持ち合わせていなくてね。でも、お金がいるというわけじゃないから、あんたは金貨1枚でいいよ。」
「じゃあ、乗った。」
「では、私が審判をしよう。」
ギルドの入り口から、一人の女性が歩いてきた。
「あれって、銀等級の……」「ああ、そうだ。何より、あのプレートがその証明だ。」「マジか⁉あの人が直々に……」
と、彼女はすごい人だということはわかる。
「これ、どっちが勝つか賭けようぜ。」「俺、ヴァイアス銀貨1枚。」「俺もヴァイアスに1枚。」「俺は、あの兄ちゃんに賭ける。」「理由は?」「アイツ、只者じゃないって俺の眼が言ってる」「なるほど。負けの予想か。ハハハッ」
など、賭けをし始める冒険者もいた。
「ヒカリ、ブレザー持っててくれ。」
「わかった。怪我、しないでね。」
「わかってる。」
俺の力も、そろそろ使わないと、鈍る。
「君、面白い体つきしてるな。」
審判をやってくれる女性が、袖まくりをしている俺に話しかけてきた。
「そうですか?」
「ああ。細いのに、無駄なく筋肉が詰まっている。」
「ありがとう、ございます。」
「では、これより、冒険者ヴァイアスとえっと……」
「ケンヤです。」
「少年ケンヤの腕相撲を始める。両者、手を組め。」
「おい、少しは楽しませろよ。」
「あんたこそ、少しは耐えろよ。」
「ほ~お、大口叩くじゃないか。」
「あんたには負けるよ。」
「このガキ、後悔してもしらねぇーぞ‼」
「では、」
魔術廻廊起動。強化魔術、右腕限定強化。
「開始‼」
“バコン!”
開始わずか0.5秒で、この勝負は、決着した。
この勝負、勝ったのは、もちろん俺。
「そ、そこまで。」
「う、嘘だろ。」「今まで無敗だったヴァイアスさんが負けた。」「アイツ何者だよ‼」「賭けは俺の勝ちだ。」「すごっ‼あの、なんか王家がどうとか言ってたけど、まさか異世界人?」
「フー、まさか、坊主がここまで強いとは思わなかったよ。俺の完敗だ。」
「いえ、この勝負、本来なら、あなたの勝ちだったでしょう。」
「どういうことだ、フィリア」
「この少年は、筋肉質であっても、あなたほどのパワーを持ってないわ。そうよね。」
「はい。強化の魔術を使っちゃダメとは言われていないため、使わせていただきました。」
「はい?」
「ですから、強化の魔術を……」
「ハ、ハッハッハハハハハハ。」
「どうしたんですか?」
「いや、まさか、詠唱なしの魔法のようなものが使えるもかと思うと、面白くなってな。」
「なるほど。魔法は禁止の勝負だから、魔術とやらを使い、自分を、しかも右腕限定で強化したというわけですね。」
「お前さん、本物だよ。ほら、約束の金貨だ。」
「いえ、受け取れません。逆に、こちらの金貨を差し上げます。魔術の練習台と下です。」
「なら、ありがたく戴いておくよ。」
俺は、金貨を渡した。
「ところで兄ちゃん、魔術とやらは、本当に詠唱がいらないのか?」
「いえ、使う魔術によって、詠唱の有無があります。」
「なるほど、いい勉強になったよ。他に何か使えるのかい?」
「それは、秘密ということで。」
「そうか。ところでお前さん、一体何者なんだ?」
「異世界人ですよ。ただし、王女に召喚された。」
「なるほど。実は、俺の知り合いにも、異世界人の知り合いがいるから、今度紹介してやるよ。」
「ケンヤ君、換金が終わったみたいよ。」
「ああ、すぐ行く。すみません、そろそろ。」
「ああ、元気でな。」
「死なないように気を付けてくださいね。」
俺は、ヒカリの元に戻った。
「随分と、冒険者の皆さんと仲良くなったのですね。」
「はい。腕相撲をして勝ってしまって……」
「本当ですか⁉もう勇者諦めて冒険者しませんか?」
「いえ、それはまたの機会に。」
「わかりました。では、こちらが、換金した貨幣になります。無駄遣いしないようにしてくださいね。」
「わかってます。ありがとうございました。」
「またのお越しをお待ちしています‼」
俺とヒカリは、ギルドを後にした。
_____________________________
(あとがき)
こんにちは、汐風 波沙です。
ギルドは、冒険者ギルドを表してます。今後出て来るであろう商業ギルドなどは、商会というようにすると思います。
さて、今回は、主人公が、久しぶりに魔術を使いました。
個人的には、詠唱なしで行こうかと迷ったのですが、大掛かりなものを詠唱なしにすると、頭おかしい奴になるので、詠唱のある魔術もあるという設定にしました。
今後とも、この作品、そして、自分の書いているほかの作品をお願いいたします。
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