第7話 俺の初デート
午前9時45分俺は、さっきの使用人さんから弁当を受け取り、城の正門前にいた。
「あと15分くらいか。はぁ~、ヤバい、緊張してきた。」
俺はしゃがみこんだ。やはり、体の交わりの経験があったとしても、デートは別物だ。
「昨日ヤッたってことは、俺、もう童貞じゃないのか。何も変わった感ないんだけど……」
そう、俺はもう童貞じゃない。だから、ヤる時はヤる男でなきゃいけないんだ。
「はぁ~、早く来ないかな秋坂。」
「呼んだ?」
「うわっ⁉ってなんだ、秋坂、もう来たのか。」
秋坂は、俺の背中に乗るようにして、俺にくっついていた。
「ところで秋坂さん?」
「なんでしょうか、剣也君。」
「そろそろ、降りてもらえませんか?」
「どうして?」
「その……、何っていうか、色々あたっていて……」
「あたってるんじゃないよ、あててるんだよ。」
「なるほど。」
「だから、今日はこのままでお願いします。」
「え~……」
「ダメ、……かな?」
こういう時の女子の上目遣いは、ズルいと思う。
「わかりました。町に着くまでの間だけだからね。」
「ありがとう‼……チュ」
不意打ちだった。まさか頬にキスされると思ってなかった。
「ご、ごちそうさまです‼」
「どういたしまして。」
どうやら、昨晩でかなり仲良くなってしまったようだ。
「じゃあ、しっかり掴まってろよ‼」
「うん‼」
俺たちは、城の前の坂を下り始めた。
「さあ秋坂、町に着いたし、そろそろ降りてくれないか?」
「ヤダ。」
「どうして?」
「ずっと名字で呼ぶから、お願い聞きたくない。」
「ハードル高くない?」
「私だって、剣也君って呼んでるんだから、私も、下の名前で呼んで。」
「え~……」
「なら、降りないで、このまま街を歩いてもらう。」
「わかった。わかったよ、降りてくれ、ヒカリ」
「了解‼降ります‼」
「ありがとう。」
秋坂が背中から降りた後、背中がかなり汗ばんでいた。
「ねえ、剣也君。」
「どうしたヒカリ?」
「腕、組まない?」
「何っ⁉」
そう、それは、どんなカップルも通る恋人つなぎではなく、結婚前近のカップルのやる腕組をするというのか⁉
「あの、ヒカリさん?」
「なんでしょう、剣也君。」
「腕組は、まだ早くないですか?」
「これくらい普通でしょ?一夜を共にしたのだから。」
「いや、まだ早いと思うよ。だから、今日のところは、手をつなぐということでどうでしょうか?」
「……わかりました。今日は手をつなぐだけでいいです。」
こうして、俺たちは、手をつなぐことにし、町の門をくぐった。
俺たちは、門をくぐると、その賑わいに、仰天した。
「今日は魚の鮮度が抜群だよー‼」「4匹ください。」
「これは北の雪国の工芸品で……」「とても綺麗‼あなた買って‼」「しょうがないなあ~、幾らですか?」「パン、パンはいかがですか~。焼き立てですよ~‼」「らっしゃい、らっしゃい‼今日はいい毛皮は言ってるよ‼」「いらっしゃい‼今日は何作るんだい?」「今日は、アダマンタイトが採れたんだ。これで一本打ってはくれないか?」「あいよぉ‼2日時間をくれ。」「じゃあ、2日後取りに来るよ。旦那ァ!」「あいよぉ‼」
など、賑わいの声の中を通っていた。
「なんだか、とても賑わっているわね。」
「ああ。とても魔王に攻め込まれそうな国とは思えない。」
「そうですね。でも……」
ヒカリは、俺と繋いでる方の手を持ち上げた。
「私たちが繋いでるこの手もきっと、平和である証なのでしょうね。」
「ああ、きっとそうなんだろうな。」
俺たちは、そのまま、歩き続けた。
「あの‼ちょっといいですか、そこのご夫婦。」
「フぇ⁉」
「はぇ⁉」
「あら、まだ恋人でしたか?まあいいです。少しよろしいですか?」
「はい……」
「……少しであれば」
「ありがとうございます。お二方は、どこか遠くからいらっしゃったようですね。」
「はい……」
「……そうですね。」
「そしてお二方は、契約よりも強いもので結ばれており、さらに、この世界を救う何かがお二方には備わっております。」
「えっ⁉」
「そ、そんなわけ……」
「さらに、そこの貴方。あなたには、何か闇と光を感じます。そして、あなたは、本当に信頼した人にしか話さない、何か感じる力があります。その力を使うとき、この世界を壊しかねないものなので、考えて使ってください。」
「はい、……わかりました。」
「そして貴女。あなたには、さらなる力を身に付けるような兆しがあるようだ。貴方は、パートナーを愛し、人類を愛することを忘れないようにすると、どんな困難にぶち当たったとしても、必ず前に進むことができるでしょう。そして、あなたのパートナーが闇の力に飲み込まれそうになった時、あなたが希望の光になってください。」
「はい‼私はこの人の光に、必ずなって見せます。」
「そうですか。では、私は旅を続けます。」
「あの、なんで俺たちを占ったんですか?」
「では、先にお二方を占った理由をお答えします。まずは、お二方が今のところ慎重に正しい道を進んでいるようですし、今後、選択に迫られたときに、正しい道を選べるようにするためです。そして、あなた方の選択で、この世界の運命が、変わるということをお知らせしていこうという私の優しさです。」
「あの、最後に名前だけ‼」
「私の名前は、エイミー。未来予知の魔女のエイミーです。ではお二方、御機嫌よう。」
「あ、ありがとうございましたぁぁぁぁぁ‼」
「またどこかでぇ~」
俺たちは、不思議な魔女に占われた。
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(あとがき)
こんにちは、汐風 波沙です。
今回は、デートパートの第1弾です。
最近、このように、あとがきを付けるようにしました。
今後続けた方がいいか、やめた方がいいかあるなら、レビューなどでアドバイスしてください。
今後とも、この作品と、自分の書いてる作品をよろしくお願いします。
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