第5話 過去のお話②

「はあ、はあ、はあ、はあ……」

「ケンヤ、お前、足の速さ以上だろ。」

「ホントっ‼なんでそんなに足に魔力込めれるわけ?」

「小さい時から、トレーニングは、欠かしたこと無いから。」

俺は、息を整えた。

「ところで、二人とも、よく俺に50週差つけられなかったね。」

「はあ、はあ、これでも、だてにトレーニングしてきたわけじゃないからな。」

「私は、魔力量が他の人よりあるしね。はあ、はあ、はあ……」

そうか。この二人も俺と同じで、魔術師志望の人たちだった。



「おかえり三人とも。時間もぴったり2時間30分だよ。すごいじゃないか。特に二人は。」

そういうと、デルタ先生は、トウガとアワネの頭を撫でた。

「デルタ兄、俺も、俺も撫でてくれよ‼」

「ダメだ。お前は甘やかすと、すぐに調子に乗るからな。あと、この二人に、50週差つけれてない時点で、居残り確定だ。」

「先生、私も残ります。今日の分の復習もしたいですし」

「なら、俺も残るぜ。俺馬鹿だからさ、もっと勉強しねぇーとやばいんだよ、先生。」

「ふたり、とも……」

「そうか。いい友達ができたな、剣也」

そういいながら、デルタ兄は笑った。

「あ、そうそう、今日の授業の内容は、チーム編成だ。5人の班を作るためにクラスを8分割したからな。」

「でも、俺たち3人しかいないぞ。」

「そうね。」

「まさか余らなかったから、俺たち3人なんじゃないのか⁉」

「心配するな。もちろん5人になるよう二人余ったが、こいつらもこいつらで……」

「なんだよ、デルタ兄」

「いや、難癖者パーティーになりそうだなあーと思ってな。」

「おい、俺に癖は無いぜ。」

「ほんとよ、私にもないわよ。」

「日本人っていうこと自体が癖者の証拠だよ、二人とも。」

「「人種差別‼」」

「この二人、息ピッタリだ。今後使える……」

「「おい、そこぉ‼」」

「チっ、バレたか。」

「やっぱり、日本人は、癖者だ。」

「もう勘弁してください、先生。」

「許してください。」

「まあ、二人が限界来ているから、そろそろ紹介するよ。入っておいで、二人とも。」

「「はい、先生。」」

そういうと、二人の子供が入ってきた。

「紹介するよ。グリシア・ファーラルとライア・アイミントだ。この二人が、君たちのパーティメンバーだ。」

「よろしくお願いします。河崎くん、篠原さん、早間くん。」

「お願いね、ケンヤ君、アワネちゃん、トウガ君。」

「あ、あの、二人については分かりましたが、なんで俺たちの班ですか?」

「それはだな、この班の生き残る確率を考えると、まともな奴が2人もしくは3人いるからだよ‼」

「俺は、デルタ兄が、俺が生き残れないと考えてるからかな?」

「いや、お前がいることによって確実に生き残ることができるのはわかっているが、班のメンバーの成長にならない。」

「なるほど。俺は、みんなが俺と同等、もしくはそれ以上になるように指導すればいいわけか。」

「そういう事だ。だから、魔力量の比較的少ない、この二人を君たちの班に入れることにした。」

「足を引っ張らないよう、最大限努力はする。」

「だから、優しく教えてね。」

「もちろん。でも、俺のやってきたことをさせていいのか、デルタ兄?」

「ああ、お前のやってきたことは、普通の魔術士よりどれだけきつかったかを、教えてやれ。」

「了解、先生。」

こうして、俺たちの訓練が開始された。

毎日朝5時より、20キロのランニング、魔術廻廊への大量の魔力注入、全属性の魔術の練習、そして、筋力・筋持久力トレーニングを行った。

「お前、ずっとこんなことしてきたのかよ。」

「人間じゃない。」

「化け物だ。」

「さすが、というしかないわね。」

最初は弱音を吐いていたが、慣れてくると、全く吐かなくなった。

そして、中等部に上がる頃には、俺よりも少し下あたりまで、4人とも来ていた。









中等部に上がる4月1日、俺は、理事長室に呼ばれていた。

「4人の成長はどうだ?」

「もうすぐ俺に追いつきますよ、理事長先生。」

「ハッハ、そんな堅苦しい呼び方するんじゃない。」

「わかりましたよ、アルファおじさん。」

「懐かしいな、その呼び方してくれるのは。」

「そうだね。もうあれから三年たったんですよ。」

「背も大きくなったし、何より、さらにイケメンになった。」

「イケメンになってはないと思うが……」

「まあいい。約束まであと3年だ。どうするか決めたか?」

「いや、まだ、根源にたどり着けてない。たどり着いてから、日本に行きたいとは思ってるけど、中等部で、この学院を去ることにした。」

「そうか。ならば、中等部3年になったら試験をしよう。」

「それに合格したら?」

「日本へ行ってよし。不合格だった場合、ここに残る」

「じゃあさ、合格したら、日本人の二人を連れて行っていいか?」

「許可しよう。」

「ありがとう。大好きだぜ、義父さん」

「私もだぞ、ケンヤ」

俺は、理事長室を退室した。







それから二年後の3三月、俺はついにたどり着いた。魔術の根源に。

始めは奇跡でしかないと思ったが、違った。これが、根源なんだということに。

「お前、すごいな。」

「もう、学院にいる必要ないんじゃない?」

「そうだな。なあ、お前ら二人さ、日本に一時的に戻ること考えてないか?」

「いや、俺は考えてないけど……。」

「私も。」

「じゃあ、三年間だけ、俺と日本に行ってくれないか?」

「どうしてだ?」

「実は、来年で、この学院を去ることにしていたんだよ。」

「いいわよ、私は別に。日本には家族もいるしね。」

「俺も、久しぶりに妹の顔を見たいし、帰るか、日本‼」

「ありがとう、二人とも。高校は、うちで準備するよ。」

「そうね。楽に高校に入ることができるなら、お願いするわ。」

「俺も‼」

こうして、来年、俺たちが日本に向かうことが決まった。









一年後の2月、ついにその時が来た。

「ただいまより、ケンヤカワサキ、アワネシノハラ、トウガハヤマの退院試験を開始する。」

そう、試験が来たのだ。

「試験内容は、班対抗のバトルロワイヤル。時間は一時間。カワサキの班が生き残れば、カワサキの班の勝ち、脱落した場合、負けとなる。全班全力を尽くすように。」

「質問いいですか?」

「よかろう。」

「他の班が全部脱落したら、どうするんですか?」

「もちろん残ったチームの勝ちだ。そして、相手は殺してはいかんぞ‼では、5分後開始する。」

そして、それぞれの班自分たちの持ち場に向かった。

「緊張してきた。」

「絶対生き残るわよ。」

「誰が来ても私たちならいけるわ。」

「リーダー、最後に気合の入る言葉を。」

「ああ。この勝負、必ず勝つ‼行くぞ‼」

「「「「おおぉー‼」」」」

こうして俺たちの試験が始まった。








30分後、決着した。

結果は、俺たちの勝ち。

そして、俺たち以外の班は、全班脱落。

「では、ケンヤカワサキ、アワネシノハラ、トウガハヤマの退院を許可する。」

「ありがとうございます、理事長。」

俺たちは、一礼した。

「最後に、ケンヤ、一つ、約束してくれないか?」

「なんでしょうか。」

「日本にいる間、魔術には、絶対に触れないでくれ。」

「わかりました。」

「よし、では、行くとよい、若者たちよ。」





それから数日後、

「こんにちは、河崎剣也君、私は、一ヶ嵜晴香。あなたのいとこよ。」

「はい。」

「明日より、私たち一ヶ嵜の養子なってもらいます。」

「はい、知っています。」

「篠原淡音さん、早間刀俄さんもともに行くことになっています。」

「はい、知っています。」

「では、日本に向かいます。こちらでやり残したことはありますか?」

「一つだけ。」

「聞きましょう。」

「かつての仲間に最後の別れの挨拶をしたいです。」

「許可します」

「ありがとうございます。」










そして、俺は、グリシアとアイラを校門に呼び出した

「今日、俺たちは立つことになった。」

「どうして、もっと早くいってくれないの?」

「いや、なんか、見送られるは、あんまり好きじゃないんだ。」

「そうだとしても、やっぱり寂しいじゃん。」

「俺も寂しいよ。人生の大半を過ごした場所から離れるのだから。」

「なら、ここにいろよ‼」

「いや、それはできない。」

「別にいいじゃないか。養子になったとしても、ここにいて、僕にもっとたくさんのことを教えてくれよ。」

「ごめん。」

「謝るな‼謝るくらいなら、ここにいてくれよ‼」

「必ず帰ってくる。」

「ヤダ。行っちゃいやだ‼私も、ケンヤ君と一緒にいたい。だから、行かないで‼」

アイラは僕に抱きついた。

「俺も、まだ離れたくない。でも、運命なんだ。だから、行ってくるよ。」

「また会える日まで、待っててもいいかな?」

「もちろん。」

「わかった。じゃあ……」

俺は、アイラに唇を奪われた。

「これは、預かっておくね?」

「ああ、そうしたいなら、そうしてくれ。」

「剣也君、そろそろ時間です。」

「わかりました。じゃあな、二人とも。」

「また逢う日までだよ、ケンヤ君。」

「ケンヤ、僕は、君よりも強くなる。強くなり、君を超える魔術士に、次会う時までになってるからっ‼」

「ああ、楽しみにしてるぜ、グリシア。じゃあ、行って来るよ‼」

「「どうか、ご武運を‼」」

「必ず帰ってくるよ‼」

こうして、俺は、日本に旅立った。

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