第4話 過去のお話

「どうぞ、お好きなところにお掛け下さい。」

「は、はあ……」

「……わ、わかり、ました」

 王女の部屋って、豪華なんだと思っていたが、まさか、俺の一人暮らししている部屋の3倍近くあるなんて、思うわけないよな。

「どうやら、座る場所に困っていらっしゃるようですので……」

 そういうと、サーニャ王女は、大きなソファーに座り、

「ここに座ってください。」

 と言いながら、自分のとなりを、チョンチョンと叩いた。

「は、はい。」

 俺は言われた通り隣に座った。

「あ、あの、近くないですか?」

 俺が座った瞬間、王女は、距離を詰めてきたのだ。

「いや、そうでもないと思いますが?」

 そして、体がくっついてしまう距離まで詰めてきた。

 ドスンッ

「あ、あの、秋坂さん、なんでここなんだ?」

「別にいいじゃない。どこにでも座っていいんでしょ、王女様?」

「はい、かまいませんよ。」

 どうやら、少し、王女も動揺しているようだ。

 なぜなら、秋坂が座っているのは、俺の膝の上だ。

 秋坂の身長は比較的には普通くらいだが、俺と比べれば、15センチ近く差がある。

「じゃあ、一ヶ嵜君、話してもらえるかしら。あなたの過去について。」

「わ、わかった。少し長くなるが、見せよう。……」

 俺は、空中に魔術でホログラムの画面を生み出した。





 あれは、17年前、俺がまだ0歳だったころの6月、俺は、イギリスのロンドンにいた。理由は、俺の実の父と母は、魔術師だったからだ。

 その日、世代交代に備えるために、俺に、魔術紋章を引き継ぐための儀式をしていた。

 まず、父さんの魔術紋章を受け取り、その後、母さんの魔術紋章を受け取ることになっていた。

 父さんの方は、安全に受け取ることができた。

 そして、母さんの魔術紋章を受け取る時に、事件は起こった。

 儀式が始まり、母さんから紋章が離れた瞬間、何者かが、儀式場に入ってきて、母さんにナイフを刺そうとしたが、父さんが代わりに刺された。

 そして、そのまま、犯人は次のナイフを出し、また母さんを刺そうとした。

 だが、そのころには、俺に紋章が完全に引き継がれていた。

 しかし、犯人は、母さんの心臓をめがけて、魔術を唱えながら、刺し、その後、母さんは、目覚めることなく、死んだ。

「おいXXX、もう、意志は引き継がれた。お前の野望ももう、無理さ。諦めろ。」

「ならば、私は、別方向からアプローチを試みようではないか。だが、貴様らは、その時には必要ない。だから殺すと決めたのだ。だが、その子だけは生かしておいてやろう。」

「ほお、歳をとると、かなり心が、広くなったんじゃないのか?ところで、俺にかけた魔術なんだ?」

「この子を魔術学院の孤児院に連れて行かなければならない魔術と、息子を手放せば死ぬという呪術をかけておいた。」

「まあ、そんなところ、か。だが、お前にも、俺から一つ魔術をかけておいた。後悔しながらおいて行け、このクソ野郎‼」

「そうか。なら、さらばだ。最奥の魔術師」

「たとえ、俺が死んだとしても、必ず、この世界は変わる。俺たちが描いた方向に。」

 男は立ち去り、この場所には、俺の鳴き声だけが響いていた。

「ごめんな剣也。日本にいる間に済ませてしまいたかったが、空間魔力の強いこっちじゃないと、失敗する確率が大きくなるんだ。許せとまではいわない。だが、父さんと母さんを忘れないでくれ。だから、今日のところはおやすみ。次、目を覚ますときには、きっといい人たちと出会えているはずだからな。睡眠ドルミル

 そして、俺は眠りにつた。






 父さんは、俺を連れて、時計塔の魔術学院の孤児院に向かった。

「よお、じん。こんな時間に……お前、何があったんだ。夕風ゆうかはどうしたんだ。」

「さっき、例の奴に襲われ、俺は呪い、夕風は刺殺で死体すら残らない状況になる。だから、この子が、15歳になったら、一ヶ嵜という日本人がお前を訪ねてくる。その時までに、こいつに叩き込めるだけの魔術を教えておいてくれないか?」

「それは構わねぇ―が、お前はどうすんだよ、このままじゃ死ぬんだろうが‼」

「俺は、ここで降りるよ。手放す前に、ひとことこの子に言いたい。……」

 父さんは、俺を強く抱きしめた。

「生きろ‼生きて、いつか立派になって、あの世で俺たちが胸を張れるくらいの男になれよ、わが息子よ‼」

 そして、俺の額にキスをした。

「じゃあな、頼むぞファイアス。」

「ああ、任せてくれ。俺が必ず、この世界で無敵の魔術師にしておいてやるよ。」

「じゃあ、最後に、俺の願いを聞いてくれ。」

「なんだ?」

「俺の魂を、剣也と融合させてくれ。」

「おい、それって、まさか、禁術……」

「ああ。だが、この場ですれば、バレない。だから、頼む。この子に俺の魔術廻廊を複製していた方がいいからさ……」

「……わかった。お前の廻廊が保存されていた方が、この子のためになるかな。魂の融合ジール・フズィオーン

 父さんの体が光り、一つの球体になった。

『ありがとうな、ファイアス。これから、頼むよ。』

「ああ、任せておけ。」

 そして、俺は、父さんの魂と一つになった。







 それから、俺は、10歳になるまで、ファイアスの指導の下、

「まずは魔力量だから、魔術廻廊に魔力を流す練習だ。」

 ということで、毎日一時間トレーニングさせられた。


 そして、小学生になる前に、

「ケンヤ、お前の父と母はな、お前を守るために、お前の魂と一つになった。今日から、お前は自立するだが、お前は孤独ではない。」

そして俺を抱きしめた。

「自分に自信を持ち、胸を張って生きろ‼」

「うん‼」

「よし‼行って来い‼」

「行ってきます、ファイアス‼」

「どうかお前に良き出会いがありますように。」

そして、俺は、初頭学部に向かった。





「ねえ、君、私と友達になりなさい。」

「はい?」

「見た感じ、あなたも日本人でしょ?」

「ま、まあ。」

「私は、篠原しのはら 淡音よ。あなたは?」

「俺は、河崎かわさき 剣也。以後よろしく。」

「じゃあ、あなたは、あの、最奥の魔術師のジンカワサキの息子さんなの⁉」

「いや、俺は、父親と母親を殺されていない。」

「そう、なら、私を姉と慕ってくれてもいいわよ。」

「いや、そういうのもう合っています。」

「ちぇ、まあいいわ。これで私たちは友達。」

「なら、その友達の中に俺も入れてくれよ。」

「いいけど、君、どこの誰?」

「なんであんたがいんのよ、早間 刀俄‼」

「なんでもくそもあるか。俺も魔術師の家計だからだよ。」

「知り合いなのか?」

「知り合いも何も、日本にいたとき、こいつと同じ小学校だったの。」

「小学校って何?」

「「は?」」

「いや、俺、この国に0歳からいて、ついこの間まで、ファイアスのところにいたからさ、世間の常識ってやつに。」

「そ、そうか。」

「な、なら、私たちで一から教えてあげよおうよ、早間君。」

「そ、そうだよな。今時一般常識がない奴は、いきていけないしな。」

「ありがとう、二人とも‼」

「と、当然でしょ。」

「そうだな。俺たちは友達だからな。」

こうして、俺たちは出会い、友となった。

「ところでさ、私たちの担任って誰だろう。」

「ネクロ先生だったら死んでもいい‼」

「剣也君は?」

「俺は、きっと俺の知ってる人が来ると思うよ。」

ガラガラガラ

教室のドアの開く音がした。教室に入ってきたのは、俺の知っている人だった。

「今日からみんなの担任をすることになった、ファイアス・デルタです。よろしく‼」

「やっぱりそうだったか。デルタ兄さんだ。」

「デルタ兄さん?」

「確かお前の世話になってた人ってまさか……」

二人の顔が引きつった。

「「ファイアス・アルファ⁉」」

「そうだけど、何かおかしいの?」

「おかしいも何も……」

「この学院の院長なんだぞ‼」

「そうなんだ。だから、みんなから院長先生って呼ばれてたのか。」

「そこの三人、特に、ケンヤ君。君たちは少しうるさい。元気があるようだから、今から、公定60週走ってきなさい。」

「デルタにい、俺も60?」

「お前は600だ。」

「クソ兄貴」

「おい、聞こえてるぞ。あと、学校では、デルタ先生だ‼」

「わぁったよ、何時間?」

「2時間30分で帰って来い。」

「わかった。行くぞ、トウガ、アワネ」

「う、うん。」

「ちょっと待てよ、ケンヤぁ~」

こうして俺たちの学園生活が始まった。

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