#77 スタートラインはここから
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制服以外で会うのって、初めてじゃない?
そんな大事なことに気が付いて、今更ながら焦る。
金曜日の午後10時。
何着ていこう……。何がいいんだ……。
洋服は? とりあえずスカート? でも制服スカートだもんなぁ、あえてのスキニーでレア感出すのあり。
髪型は? 結構巻いちゃおうかな。いつもはストレートだし。
アクセサリーは? うーん、服をスキニーでシンプルめに抑えて、大振りのイヤリングをアクセントにしてみようかな。そしたらコントラストが良さそう。
メイクは? 迷うなぁ。秋冬のメイク……。ボルドー系のリップが良いのか、オレンジ系でまとめた方が健康的で良いのか。
あぁ、ファッションって奥深過ぎてほんっと難しい!
ベッドに寝転がり、スマホと雑誌を交互に見ながらうーんと考える。
男の子と出かける。
それだけで、こんなにも色々考えるなんて。
結構自分では頑張ったアプローチだった。——もちろん、彼とのホラー映画デートのことである。
ホラー実は無理! とかいうわけじゃないんだけど、誘う口実見つけるの大変だったなぁ。わざわざホラー映画をチョイスした私は良かったのか悪かったのか。それすらも分からない。でも友達に聞けば相手の詮索が始まること間違いなしだし、ママに相談しても「彼氏? ねえ、彼氏?」って聞いてくるのが目に見えている。まだそういう段階ではないのだ。ここからが正念場で、だから失敗したくないのだ。
正直、今最も心配な要素は、彼の様子。俺以外の人と行くのでも良いのに、みたいなことを割と言われた。もしかして、ホラーが苦手なの? 私とだと行きにくいの?
そんな悲しい思考が次々現れるけれど、頭をブンブンと振ってなかったことにする。
前途多難でも、諦めようとは思ってないの。
私は京汰くんと行きたいんだから。
自分でやっと分かったんだよね、いわゆる好きなタイプってやつが。
周りを一気に明るくしてくれて、でも感情表現もちゃんとしてくれて、思いやりのある人。追加でイケメン。
そして分かったんだ。
これが、藤井京汰と結構当てはまるってことが。私自身、結構びっくりしてるんだけど。
つまりこれが本当の意味での初恋、なのかな。
でもあのゆーまくんって子? も結構イケメンだったし、なんか雰囲気京汰くんに似てた気がする。
……げ。私思ったより面食い?!
あながち間違いじゃなさそうなツッコミも、ブンブンと頭を振ってなかったことにする。
とにかく、気になる人がいる。それだけでも人生は明るくなるものだ。
それにしても、ゆーまくんとの出会いは不思議だった。そもそもなぜ、私は倉庫の中なんかにいたのか。
そして、文化祭の日に屋上で目覚めて、京汰くんといた時も不思議だった。そもそもなぜ、私は彼に抱き抱えられてたのか。
……冷静に考えてみると、どこか同じような不思議感。何だったんだろう、あの感覚は。霊感ってやつなのかなぁ?
京汰くんなら何か分かるかな? 何となくだけど、彼ならゆーまくんとのことも、バカにせず聞いてくれそうな気がする。
明日、京汰くんに話してみよう。
結局2時間くらい悩んだ結果、明日の洋服とアクセサリーとメイク道具を用意して、部屋の電気を切る。
私の恋はまだ、始まったばかりだ。
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