後日譚
#64 詐欺にはご注意を
・・・・・・・・・
無事に妖退治を終えた僕たちは、ごくごく平和に帰宅した。今日みたいな日は、平和って大事だなとつくづく思わされる。戦いは何も楽しくない。
「はぁぁぁっ、緊張したぁぁあ焦ったぁぁぁあ」
玄関に入るなり、京汰は盛大に息を吐く。
うーん。確かにこの人頑張ったのは認めるけど、それ以上に説教しなきゃいけない点が多いんだよねぇ。まずはどこから説教しましょうか。
『京汰。手を洗ったらリビングに来なさい』
「な、何だよ親みたいな言い方して!」
ブツブツ言いながらも、素直に従う京汰くんは、やっぱり良い人間ではある。
ソファに腰掛けるように手で示して、僕は言った。
『京汰くん。本日はお疲れさまでした』
「お、おう、お疲れ」
『しかしですね、ちょっと注意しなきゃいけないことがあります』
「はぁ」
なんなんだ、その魂の抜けた返事は。
僕は京汰の脳みそ全てに届くように、夕刻に屋内で出せる精一杯の声量を彼にぶつけた。
『なぜ皆川先輩を妖と見抜けなかったわけええええええ?!』
京汰は「うわああああああっ!」と、思わずソファから腰を浮かした。
「え、そ、それは……! ってか悠馬はいつから分かってたの?!」
『昨日体育館で見た時からだよ。あまりに人間離れしてるんだもん、おかしいなぁって思わない?』
京汰はふるふると首を左右に振る。
「思わないよ……あんなイケメンもいるんだな、としか……」
素直というのは、時に致命傷になるということをよく胸に刻んでおけ、京汰よ。
彼は将来、絶対に3回くらいは詐欺に遭う。僕が断言してあげよう。結婚詐欺に2回、老後の振り込め詐欺に1回遭うはずだ。
『バカっ! 人間離れしてるな、と思ったら、ほんとに人間なのか疑いなさい! それに華音様に僕が視えてたことにも気づかないなんて……クラスのカフェで装飾が取れた時に分かんなかった?! 普通天井付近の装飾が取れたなら天井見るじゃん、なのにその下にいる僕の方に目線向けてたよね?!』
詳しくは第43話を参照されたい。
「一瞬それ思ったけど、きっと違うって……」
京汰の声は、いつになく弱々しい。僕に突っかかってくる時の覇気はどこに行ったんじゃ。
『一瞬でも思ったなら、まずは勘に従えええええええっっ!!! 君の直感は普通の人間とは違うから! だから従って間違いはないから! そういう小さな気付きが世界を救うのね?! そしてそういう小さな見逃しとか綻びが世界を破滅させるのね?!』
もう止まらん。こんな鈍すぎるおバカを放っておくことはならん。
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