#59 奇跡は時に残酷で
光の玉が華音の胸に入って消えた後、彼女はゆっくりと目を覚ました。少しきょとんとしていたけれど、すぐに驚いた顔をした。……まぁ当然っちゃ当然だが。
「えっ?! な、なんでっ……、ち、近い……!」
目覚めたら男に抱き締められてた。
たしかに結構怖いよね。お酒飲んでないのにこうなってる、制服着た状態でこうなってる、夜じゃないのにこうなってる、ってもっと怖いよね。うん。
「だばっ! ご、ごめんごめんごめんそういうつもりなくって! 微塵もミジンコもなくって! これはマジで不可抗力、事故! 誤解です!」
京汰は慌てて腕を解いた。華音も同時に京汰の肩から手を離す。
京汰は「マジ違うからね、安心してね」と逆に恐怖を煽りそうな発言をした後、やっとまともな声かけをした。
「だ、大丈夫……?」
「大丈夫、だけど……。え、私、何か迷惑を……? ごめん全然覚えてなくて!……あ、京汰くんか……」
やっと華音の目が京汰の姿を捉えたようだ。
京汰は僕をチラッと見る。何て言おう、という顔をしてる。
ああ、僕と彼女の関係についてか。彼女は何と言うのだろう。
京汰は少し迷ったようだが、すぐに彼女に話しかけた。
「あ、あのさ、悠馬のこと視えるんだよね……?」
「ん……ゆうま、?」
「ほんとは視えないはずの式神なんだけど、なんか視えてるみたいで、俺びっくりして……!」
「しき、がみ……?」
京汰は僕のいる方を指差す。
「ここにいるんだけど、分かる?」
しかし、彼女と僕の目線は一向に合わない。
華音はちょっと戸惑った顔をした。
「えーと、京汰くんこそ、大丈夫……?」
京汰は目を見開いた。僕をチラリと見た後、再び視線を華音に戻す。
「……あ、うん、大丈夫だよ! あの、さっき言ったのは忘れて!」
「うん……」
やはり一時的だったのか、あの才能は……。
姫の末裔として命の危機が迫っていたから、視えるようになっていただけかもしれない。
ちょっと覚悟はしていたけれど、やはり現実を突き付けられると、呆然としてしまう。
僕は静かに隠形した。
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