#55 式神も呪詛の誤り
俺はとっさに短く
すると、妖の周りに立ち上る煙と、そこで
しかし、そんなのは間違いだとすぐに思い知らされた。思わぬ攻撃を受けてキレ始める奴な。 美しい妖の目は徐々に吊り上がり、爪が鋭利で長くなっていく。華音様の腰に添えられていた手からも爪が伸びて、彼女の口から、くっ、と音がした。
レイティング変更。セクスィー路線からバイオレンス路線へ。典型的なDVじゃねえか。ふざけんなよマジで。
……ってヤバい、このままだと彼女の体にどんどんめり込んでいく……!
〔お前ら、好きだったんだろ? 彼女のこと。最期まで見届けてやれよ〕
『ふざけんなよほんとに……もうこうなったら、一気に
拳を握りしめ、目の色を変えた悠馬がそう呟く。俺は耳を疑った。
業火って……文字通り、とんでもなく威力のある炎の攻撃である。悠馬の本気の術は見たことないが、この怒りの強さからして、学校ごと全焼させそうな気がする。結界があるからそこまではならないはずだが。ただ燃やしたら、妖のすぐ近くにいる華音様にも少なからず被害が及んでしまうはずでは。彼女は結界の中にいるのだから。
「いや、やめろって! 華音様は人間だぞっ?!」
慌てて止めると、悠馬はハッとした顔になった。まさかの気づいてなかったか。悠馬らしくない。どうした。
悠馬は危なかった、と呟き、『じゃあこれなら……』と準備する。 好きな人が追い込まれていると、驚くほど冷静さに欠ける。それは人間じゃなくても多分一緒なんだな。
悠馬が何をしたのかは知らないけど、彼女を大切に想う気持ちは同じだ。例え好きな気持ちが一緒でも、俺達は目の前のバケモンみたいなことはしない。彼女の意識を遠のかせ、喰うなんてことは、絶対に。
準備を整えた悠馬が呪を唱えた。その声音は、こちらが震えるくらいに低く恐ろしい。俺の気持ちも奮い立つ。
すると悠馬のお陰で、妖のマントが一気に引きちぎられた。
しかし、悠馬の攻撃と同時に妖は華音の背中に一気に爪を立て、もう片方の手をこちらに伸ばしてきた。
その瞬間、俺達を囲むように無数の
その直後。
『あっっっつっっっ!!!』
刃を抜こうと触れた途端、刃から火が出たようだ。悠馬が後ろに飛びずさろうとしたけどうまくいかず、俺の肩にぶつかる。
『京汰ごめん』
「気にするな」
他の可能性を探して、脳内を検索する。何か良い
しかし、検索している途中で気がついた。
刃の間隔が狭すぎて、これじゃ呪詛が効力を発揮できない。刃の間から妖に命中させるのは、今の俺には至難の業だ。むしろ自分に跳ね返る危険性がある。そうなれば俺の命はない。
でも早くしなければ、華音様の命がない。
どうすればいい? どうすれば……?!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます