#26 非リアの祭り
華音様は男女問わず皆に輝く笑顔を振りまき、香りの良い長い髪を耳にかけ、教壇に立った。朝の光も手伝って、彼女の美しさに磨きがかかる。おお、本日も麗しい。リアル女神。太陽よ、彼女を照らしてくれてありがとうございます。
あぁ、これでナース服とか着てくれたら、もう俺何回冥土に行ってもいいよ。三途の川自由形個人メドレー永遠にできる。
「おはよう! みんなにお菓子持ってきたよ〜」
すると非リアの男子陣(ほとんど全員)がすかさず雄叫びをあげた。それに呼応して、女子は「キモっ」と言い合う。女子の皆さん、その悪口ガッツリ俺らに聞こえてますって。
「俺たちにもあんの?!」
「一応ね。でも男子に手渡しとかちょっとアレなんで、教壇の上に置いとくからみんな取ってねー。あ、女子はもちろん手渡しでっ!」
一部の男子は猛然と教壇に走っていこうとしたが、1人の男子が待ったをかけた。よりによって俺が仲良くしている奴である。どうした。
「手渡しがアレなのは分かるけどさ〜、そんなら俺たちに投げて渡してよ! キャッチしたい!」
……何を言うんだこいつは。
「え、何言ってんの、やだよ投げないよ」
ほらほら、華音様も同意見じゃんか。麗しいお顔が微かに歪んでしまっている。華音様になんつー顔させてんだてめえ。後でしばくぞ。
まぁ、歪んだ顔さえ美しいのだけど。
「そこを何とかっ!!! 華音様っ!!!」
ヤバい。これは土下座しかねない勢いである。てゆかもう、正座しそう。神に懇願する最下層の庶民みたいになっている。どうしたんだ。俺と一緒にいたらバカが伝染したか。ああ、華音様のお顔がみるみる曇っていくじゃないか。
華音様を困らせる人間は有罪だ。無期刑だ。後で絶対に絞め殺すぞ覚悟しとけ。
華音様は黙ってしまった。周りの女子は「やめときなよ」と忠告している。でもここで「やめる」ときっぱり言わないのが、女神・華音様なのだ。
「んーもうしょうがないね本当に。土下座なんかされたら困るし引くし。……じゃあ、1回だけだよ! 1個だけ投げます」
ま・じ・か。
悠馬も目を見開いている。そりゃそーだわな。
<僕欲しいな>
(黙れ)
土下座しかけた奴は、立ち上がり俺にピースした。……マジか。マジですか華音様。仏かあなたは。
「「「「「「「「「「「よっしゃああああああああ!!!」」」」」」」」」」」
男子陣の大声が響き渡る。「なっ、こういうのは一度おねだりするべきなんだよ京汰! 俺キャッチしちゃうぞ〜」と俺の肩をつついて友達はいうが、お前さっき華音様に引かれてたの気づいてないのかな。まぁ俺も以前華音様に引かれた身なので黙っておこう。
非リア男子陣が一斉に手を伸ばす。皆の熱意と執念に今一度動揺するが、負けるわけにはいかない。悠馬の方を見やると、彼は華音様の隣で手を合わせ、俺に頷いていた。彼はこの競争に参加しないらしい。賢明な判断だ。黙れと伝えた甲斐があった。そりゃそーだ、あいつがキャッチしたらお菓子が宙に浮いてることになる。まぁ理由は分かるが、悠馬お前その立ち位置はないだろ。いくら視えないからって華音様の隣独占っておまっ……
ポーンと、お菓子がこちらに投げられた。やべえ緊張する。華音様からのブーケトスならぬスナックトス。運命は誰の手に……?
「うわっ?!」
嘘やろ。
……俺の手?!
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