第35話 『利子がつく』
「借りたものは返さねばいけない」と言ったのはリコリスだ。
『消しゴム借りたのに返してないの? 駄目よ、明日ちゃんとお礼を言って返しなさい』
なんで返さねばいけないのかという僕の問いかけに、リコリスはこう答えた。
『借りた、っていうことは、もらった、っていうことじゃないでしょ? 相手はそれが必要で、返してもらう想定で貸してるんだから、ちゃんと返さないと駄目でしょ』
『返さなかったらどうなるの』
『怒られるか嫌われるか。もし返したとしても、あんまり期間が遅くなると、かなり利子がついちゃうかもね』
『りし?』
『余分なお金よ。なんていうか……相手が返してもらうまでに待ってきた、待ち駄賃てところかしらね』
僕が黒田からお金を借りて、一体どれほどの時が経ったのだろう。借りたのが4月の中旬で、今が六月初めだから、大体一ヶ月半というところか。借りたものを返す場合、遅れたぶんだけ利子がつく。あの時黒田は「返さなくてもいい」「もう時効だ」と言ったけれど、返していないことには変わりない。僕は一体、どれほどの利子を返さねばいけないのだろう。
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