⑽
気付いたときには、全く別の場所にいた。
何かが動いているのはぼんやり見える。だが、他の部分は全て黒で覆われており、真っ暗な空間にいるようだ。
「...ここは?」
戸惑いながらも彼女に尋ねる。
「ここは不安を感じた者を矯正する場所です。」
冷徹な声で答えてくる。
そういえば、彼女は出会ってすぐに、そんな話をしていた。
確か、未来に関する...何とか。
「貴方をここに連れて行くのは、正直分かっていましたが...まぁ、不思議なこともあるのですね。」
「はい?」
「えぇ。不思議です。」
「えと、あの、ちょっといいですか?」
「こんな事、他の人では...」
突然、彼女は何か呟き出した。
こっちの声に気付いてもらわないと困るのだが、届きそうもない。
仕方なく、周りを眺める。
人がいる。結構な人数だ。歩いたり座ったり、寝ていたり、色々な人がいる。
「...?」
違和感を感じる。
いや、おかしい。明らかに変だ。どうして気付かなかったのか。
これは見てはいけないと脳が叫ぶ。だが、あまりの衝撃に顔が動かない。
そこら中に転がる、腕、脚、目、鼻、何か分からないもの等々。そして、そのうちのどこかが"もぎ取られた"人間達が、目に入ってしまった。
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