気付いたときには、全く別の場所にいた。


 何かが動いているのはぼんやり見える。だが、他の部分は全て黒で覆われており、真っ暗な空間にいるようだ。


「...ここは?」


 戸惑いながらも彼女に尋ねる。


「ここは不安を感じた者を矯正する場所です。」


 冷徹な声で答えてくる。


 そういえば、彼女は出会ってすぐに、そんな話をしていた。


 確か、未来に関する...何とか。 


「貴方をここに連れて行くのは、正直分かっていましたが...まぁ、不思議なこともあるのですね。」


「はい?」


「えぇ。不思議です。」


「えと、あの、ちょっといいですか?」


「こんな事、他の人では...」

 

 突然、彼女は何か呟き出した。


 こっちの声に気付いてもらわないと困るのだが、届きそうもない。


 仕方なく、周りを眺める。


 人がいる。結構な人数だ。歩いたり座ったり、寝ていたり、色々な人がいる。


 「...?」

 

 違和感を感じる。


 いや、おかしい。明らかに変だ。どうして気付かなかったのか。


 これは見てはいけないと脳が叫ぶ。だが、あまりの衝撃に顔が動かない。



 そこら中に転がる、腕、脚、目、鼻、何か分からないもの等々。そして、そのうちのどこかが"もぎ取られた"人間達が、目に入ってしまった。

 


 



 

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