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学校を逃げるように出ると、どっと力の抜けるような感覚に襲われる。
中途半端に整備された石畳を歩くことさえ出来ず、そのまま座り込んでしまう。
ボクに向けられる視線は無い。
「不安の...ない?」
教師の放った言葉をぼんやりと思い出す。
ずっとこの世界に色々と違和感は感じていたが、文化とか習慣とか、偶々そうだとか、そうとも考えられるものだった。
しかし、不安がないなんてのは、さすがにおかしくないか?
幸福論者とか布教してる人とかなら言うかもしれないが、あの状況での文句に使う言葉か?
「...あの男が狂ってるだけだ。」
そうだ。だってそうでなければ、あの生徒達が不安じゃなかったことになる。
そんなはずない。殴られてんだぞ?殴られて不安にならない人がいるか?殴られるのを見て不安にならない人がいるか?
いるのか?いや、全員違うとは断言できないのか?いや、だとしても何人かはいるだろう。
いや、もしかして偶然あの空間にいなかったのか?そんなことあるか?もしかしたら本当に皆、不安を感じないのか?
そんなはずない。そんなはずがある訳ない。そんなはずないに決まってるだろう。
「そんなはずない...」
頭を抱え込み、つぶやいてしまう。すると、頭上から、聞き覚えのある声がボクに尋ねてきた。
「おや?不安...なのですか?」
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