暴れる男を引き離してもなお、子供達の表情は無表情なままだった。


 とにかく、教師はどうにかしなければならない。


「やめて下さい!無抵抗な子供を殴るなんて...」


「何言ってんだ?こいつを殴ろうが問題ないだろう。」


「何って...自分がどれだけまずいことをしているか分からないんですか?」


「まずいこと?別に何も悪くないじゃないか。」


 彼は怒っておらず、単純に僕の言いたいことが理解できていないようである。


 一度、周りを見渡す。相変わらず無表情な子供達が目に入る。


 人を取り押さえながらでは少女の顔は見えなかったが、どうやらあの後から一歩も動かず、椅子に座り続けているようだ。


 ボクに対する賞賛も、教師に対する抗議の声もない。


 子供に対してそんな事を期待するのは馬鹿げたことだろうか。それとも、彼の行為は暴力とか言う奴じゃなくて、ボクはピエロにもなれずに眺められているだけなのだろうか。


 

 もしかして、この場においてボクは正義のヒーローにはなれていないのかもしれない。それは、まさにボクにとっての"まずいこと"であるような気がして、呆然となる。

 

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