2月 2/3

みなさんおはようございます。私です。

先日はちょこっとだけ寂しがりになったけど、翌日からは元気に復活しました。


お泊り後の姉妹ちゃんたち、今は見習いの間では姉妹天使と呼ばれてるそうです。

魔法の習得遅れてたのにいきなり才能開花しちゃって、魔道具技師の上位陣に食い込んじゃう実力らしい。


しかも見習いの講師を引き受け、見習い陣の成長が加速してるそうな。

でも、そのおかげで急に忙しくなっちゃって、次のお泊り予定が決まりません。

まあ、いいことなんだから仕方ないと、気長にお泊り予約を待ってます。


世間様では、ソード君たちが助けたご令嬢の公爵家が、細工師関連の商会を発足。

ソード商会やマギ君が設計したもの(魔道具以外)を製造し、販売も手掛けるそうです。

今はまだ試作段階も多いらしいけど、既に注文が殺到してるんだとか。

マギ君、王都では発明王子とか呼ばれてるらしいよ。

これでまた一つ仕事の丸投げ先ができたので、ソード君の忙しさが緩和することを願ってます。


あと、スライムダンジョンをトラップ化する専属チームが出来たそうで、王家直轄地を回ってトラップ化を進めてるんだって。

これで核や檻詰めスライムの高騰も落ち着いてくだろうし、薬草畑もあちこちに出来れば、ポーションの低価格化と安定供給も期待出来るね。


私関連では、まず、お米が収穫出来ました。

そして新米のために、魔道具式の脱穀機、籾すり機、精米機を作っちゃいました。

だってあれ、手作業じゃ無理だよ。根性が尽きる。

魔道具開発は苦労したけど、新米のために、私頑張ったよ。

地道な労働が嫌で、魔道具に逃げたとも言えるけど。


新米はね、予想以上に美味しかったよ。

新米コシヒカリまでは行かないけど、十分美味しいと思える味でした。

それで味をしめた私。水田拡張して、今は種籾の発育待ちです。

目指せ三期作!


以前もらったお米は、多分管理状態悪かったんだと思う。

だから低温保管庫まで作りました。

洞窟内、温度湿度とも玄米に丁度いいからね。ただの小部屋だけど。


農業関連では、魔力濃度で生育の違いがあることがわりました。

畑や水田には温度調節用の温風機が設置してあるんだけど、核の補充時に結構魔力が漏れてて、部屋内の魔力濃度が上がるんだよ。

比較実験用の独立野菜小部屋、温風機の核補充した翌日から急に成長したんだよね。

独立した二畳くらいの小部屋だったから濃度が結構上がっちゃって気づけたんだけど、温風機の核補充が原因で比較実験失敗するとこだったよ。


いつものように調子に乗った私は、独立小部屋に核をむき出しで放置。

翌日見に行ったら、成長は著しいんだけど葉野菜固くなってた。

そう、ポーション薬草の二の舞です。

適正濃度を調べるのも面倒だし、私にとっては今の畑の状態で十分だから、ある程度のレポート書いてマギ君に送りました。


おうち関連だと、実は新しい工房を設計してます。

姉妹ちゃんが泊まりに来ると客室埋まっちゃうから、今の工房を客室化しようかと思って。

そうなると工房の行き場がないし、どうせなら工作室も欲しい。ついでに大きめのお風呂も。


悩んだ結果、別棟を建てることにしました。

おうちがある段の2つ下、段の西の端あたりが割と広いんだよね。

しかも西の端だから下水道短くて済む。


あそこならおうちと距離も近いから地下道で繋げられるし、工房だけじゃなく地下の倉庫もそっちに持ってけば、おうちに客室と地下浴室が増設できる。

だから設計始めたんだけど、おうちと同じような外観では、いまいち楽しくない。

かといって、今のおうちと似合わないデザインにはしたくない。

で、思い付いちゃいました。


ムーミ○ハウス作ろう。

外観かわいいし、土地に対してサイズや形状も合ってそう。

蛇足だけど、ここって北欧っぽい地域だし。


今の設計では、直径11mの一フロア二十四畳ほどの三階建。

中央には大黒柱代わりの直径1mの高圧縮レンガ製暖炉煙突。

外壁はおうちと同じ圧縮レンガ製。

青の塗装は難しいけど、赤レンガで屋根は赤っぽく出来る。

内壁は、10cmの空気層を挟んで木の板張り。

階段は内壁に沿った螺旋階段。

横の崖内には長物資材倉庫。


でも、建築資材足りないの。

レンガのストックはぎりぎりなんとかなりそうだけど、木材が圧倒的に足りない。

内壁と床が、全部木造予定だからね。

丸太余ってて邪魔だとか思ってたのに、一転して木材欲しい。

自分のことだけど、身勝手だよね。


今は建築予定地への地下道掘ってます。

ガレージが一番近いけど、15mくらい下がらなきゃいけないから階段多い。

階段づくり、めんどい。

まあ、工房自体の工事は雪が解けてからだから、ぼちぼち作業してます。


さて、日課も終わってお昼済ませたので、そろそろ納品に行こう。

ネージュ、街行くよー。


うん、雪ブロック、また増えてる。

二段積みしちゃってるから、圧迫感がすごいな。

どこぞのアルペンルートみたいだ。


ソード商会で納品しようとしてたら、店に飛び込んで来た険しい顔のソード君に、並べてたポーションごと拉致られました。


なんぞ?


雪上車にも乗らず、私を姫抱っこで抱えたまま走るソード君。

説明無いってことは、おおっぴらに話せない緊急事態ってことか。


「目的地教えて。私も走った方が早い」

「お、おう。南門だ!」


ソード君、相当焦ってるし、私とポーション要るってことは、けが人か?


ソード君に先導されて南門の外に出たら、あちこちに人が倒れ、雪には血が飛んでた。

街の兵士さんたちが数人、城壁にもたれかかったり寄りかかって座り込んでる。


「お嬢は兵士の治療を!」


倒れてる人に向かおうとしたら、ソード君から指示が入った。

そっか、そっちは敵側なんだね。


私は指示に従い、出血の多そうな兵士さんから順に、傷口を水で洗ってからポーションを掛ける。

そして裂傷に見合った量を追加で飲ませます。


兵士さん側の治療が終わったのでソードくんを見たら、倒れた敵側の一人の前にしゃがみこんで、何か話してる。


口出しできないけど、早くその手に持ったポーション、使ってあげて。


私は大丈夫そうな兵士さんを引き連れて、残った倒れてる人を見て回ったけど…。はぁ、やっぱりダメか。


状況的には、兵士さんを襲って返り討ちにあったってとこだろうけど…。

こんな事しなきゃまだ生きていられたのに、なんでこんな事するの?

生きたくても生きられない人が大勢いるのに…。

せめて無駄にした寿命、その人達に分けてあげてよ。


やがて応援の兵士さんたちも駆け付け、遺体を運び出しました。

兵士の格好した遺体は無いから、こちら側はみんな無事みたい。

そういえば雪上車が放置されてるけど、敵側がこれに乗って来たってこと?

じゃあ、元々乗ってた人は?


「ソード君、この雪上車が乗っ取られてたの?乗務員は大丈夫?」

「はっ!すぐに確認の雪上車出す!」

「警備も一緒にお願いね」

「そうだな。後続が居ないとも限らないな」


ソードくんは、テキパキと指示を始めました。

もう私、すること無いよね。

ネージュ、残りのポーション納品して帰ろうか。


ネージュと歩き始めたら、領主様と従者さんが走ってきた。

領主様、大剣担いでるけど、転けない?

一礼だけして別れました。


ポーションは納品したけど、気持ちがうまく切り替わらないので、かける君の運転は危ない。

しばらく休憩させてほしいと頼んだら、誰もいない執務室に通された。

お茶ももらって、ネージュと二人でしばし休憩。


相手側、十五人くらい居たよね。

この街を集団で襲撃する理由……多分魔道具関係だよね。

生誕祭前日といい今回といい、魔道具のせいでいっぱい死んじゃってるな。

人々が便利になるための魔道具なのになぁ…。


発明したの私だから、私のせいで人が死んじゃってる。

犯罪犯す人が死んじゃうのは自業自得だとは思うけど、私が作った物のせいで死人が出てるのは事実。

はぁ、落ち込むなぁ…。


落ち込んでたら結構な時間が経ってたみたいで、ソード君が帰って来ちゃった。

外見たら夕方だったよ。


焦って帰ろうとしたら、『そんな状態で町の外に出るのは、辺境人として許せん』とか言われて領主館に連行されました。


館でも気持ちの復帰出来なくて落ち込みつつ食事してたら、領主様が話をしてくれた。


ポーションって、発明当時は利権を巡るいざこざで、結構な死人が出たそうな。

開発者は嘆き悲しみ、開発者の様子を耳にした当時の王が、『ポーションを得て生きようとする人の願いを不正に利用するものなど人にあらず。人を死に至らしめる害虫として、即刻駆除せよ』とお触れを出したんだって。


結果、貴族平民問わず、ポーション利権で犯罪性が確認できたものたちは、『害虫』として全て『駆除』されたらしい。

『害虫』、『駆除』って言っちゃうとこがすごいよね。

当時の王の思い切りの良さに、思わず感心してしまった。


今回も“はかるん”が出来たことで、今まで検挙出来なかった不正が検挙可能になり、『駆除』が進み、王都では急速にポーションの適正化が出来たとのこと。

はかるん開発時に捕まる悪人もいるだろうとは予想してたけど、『駆除』されてたか…。


金の亡者たちも、発覚即、全権利剥奪の上『駆除』では割に合わないらしく、一斉に不正から手を引いて、王都のポーションの値段は一気に是正されたんだって。


実は、魔道具に関してもポーションのお触れに準ずると、貴族家には通達されてるそうです。


そしてこう諭された。


「薬師として、人死にを忌避するのはわかる。だが、捕まった悪人を生かすのなら、生かすために税金が使われる。被害に遭った人たちに、悪人を生かすために税を払えとは、領主として絶対に言えないのだ」


『絶対に言えない』……それは、悪人が友人や家族の場合でもって意味が入ってるよね。

為政者としての領主様の言葉には、深い悲しみと苦悩が感じられた。


私には、水晶ランタンや魔道具を隠匿して、ただの薬師として生きる選択肢もあった。

でも、公表すれば面倒ごとになる可能性も予測しながらも、公表することを選んだんだ。

それは、私の個人的事情より、人々の助けになることを優先したからだ。

雪上車だって、自動車に発展してこっそり軍事に使われる可能性があることも理解してる。

それでも、輸送事情の改善で、助かる人々が確実にいるだろうと公表したはずだ。


領主様の覚悟ある言葉を聞いて、自分の覚悟が足りてなかったことを思い知らされたよ。


それに、『私が発明したものを欲するために人が死んで悲しい』ってのも、よく考えたらおかしくないか?

お金を考え付いた人は、お金がらみの殺人があるたびに負い目を感じなきゃいけないのか?

宝石作った人は、宝石強盗で殺人があるたびに後悔しなきゃいけないのか?


違うよな。欲に負けて殺人犯す奴が悪いに決まってる。

今回なんて、欲を掻いた奴らの為にソード君や兵士さんが手を汚す羽目になってるしケガまでしてる。


…うん、段々腹が立ってきたぞ。

私、へたれて悲しむんじゃなくて怒るべきだ。



夕食後は姉妹ちゃんとお風呂に入り、姉妹ちゃんの部屋に泊めてもらいました。

お泊り会みたいで楽しかったけど、妹ちゃんの抱き枕になっちゃったので、ちょっと寝苦しかった。

…発育いいな。


翌日、いつものごとく新しい服を着て、みんなで朝食。

姉妹ちゃんがニマニマしてるので理由を聞いたら、新しい服、領主様に頼まれて姉妹ちゃんが注文したんだって。

どうりでおしゃれなわけだ。


そろそろ泊まる度に新しい服もらうのは遠慮したいと申し出たんだけど、領主様だけじゃなく姉妹ちゃんにまで却下されてしまった。

もっと頻繁に泊まりに来てくれるなら考えるって、どゆこと?


朝食後、従者さんにかける君のとこまで送ってもらい、お見送りされながら帰りました。


帰宅後、かける君の整備してから改造始めたの。

乗り逃げ防止、考えてなかったから心配になったんだよ。

ソード商会の雪上車、多分乗っ取られたんだよね?

かける君盗まれたらダメージでかいので、アクセル部の床下に隠しメインバルブ付けました。

動作させるには、床下に隠れたメインバルブを魔法で開かないと動かないよ。

これで、多少は乗り逃げ防止になるよね。

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