11月 1/3

いよいよ11月に入りました。


周りは完全に雪化粧。

このまま徐々に積雪が増えていくはずです。


そんな中、ソード君が、かける君を見に来ました。

なんと、フレームもろ出しの試作雪上車で一人で。

当然、叱りました。

まあ、まだホワイトアウトするような時期じゃないから強くは言わないけど、冬場の単独行動は感心しません。

私も人の事は言えないんだけどね。


急に時間が空いたから、かける君見たくて来たんだって。

車庫で見るだけでは済まず、試乗会しちゃったよ。

自分用の雪上車作るのに、参考にしたいんだって。

満面の笑みでかける君の隅々まで見てたよ。

男の子って、車好きだよねー。


せっかく来たんだからと、収穫した野菜、檻詰めして括り付けて持たせてやった。

フレーム剥き出しの雪上車に野菜満載。

小型トラクターに無理やり野菜積んでる農家さんみたいだった。


私の生活は、半冬ごもり状態です。

冬ごもりの買い出し済んでるし、森の巡回ないし、ポーション大量納品しちゃったし、街で変なのに絡まれたくないし…。


なので時間のかかる制作物作ってます。

キルティングのラグ。

私の部屋とリビングに敷こうと思って作り始めたんだけど、これは大変過ぎた。

手縫いじゃ、縫うのに手間がかかりすぎ。


途中で断念してミシン作っちゃいました。

ボビンの形状やら回転数、針の落ちるタイミングと、かなり作成に苦労したけど、延々と手縫いする苦行よりは、構造悩みながら作ってる方が、私の性には合ってるみたい。


出来上がったミシン使って再チャレンジ。

最初の内は軽快に進むからご機嫌だったんだけど、綿が偏らないようにあちこち縫わなきゃいけないから、だんだんと面倒になって来て、最後はほぼ惰性になって完成させたの。


縫ってる途中で、もっと効率化出来ないだろうかとか、自動で縫う機能は出来ないだろうかとか余分な思考が邪魔してきて、いまいち作業に没頭できないんだよ。

単純作業は私には向いてないのかも。

枕カバーも縫ったんだけど、私にはこれくらいが丁度いいみたいです。

でも、ネージュのお布団やネージュバスケットの飾り縫ってる時は楽しかった。

なして??


まあ、こんな風に平和に過ごしてる私です。

今日も日課(畑仕事も日課になりました)を終えてリビングに戻ったら、ネージュが窓枠に座って日向ぼっこしてます。

あ、床にきれいにネージュの影が出来てる。

…これ、写せないかな。


木の板持って来て影を写し描きしようとしたんだけど、自分の手の影でネージュの影が消えちゃって、うまく写せない。

ぐぬぬ

でも、手をどけるときれいなネージュの影が板に落ちてるの。

ぐぬぬぬぬぬ

何としても残したいのにうまくいかない。

しばらく試行錯誤してたんだけど、うまく出来なくて段々イライラしてきた。


「そこにあるならちゃんと焼き付いてくれてもいいじゃん!」


あ、すいません。取り乱しました。


…は?

板ずらしたらネージュの影が二つ並んでる。

影の色や形がそのまま板に移ってます。

思いが強過ぎて勝手に魔法として発動しちゃったの?

魔法すげー!


そして欲張りな私は更に欲を掻きました。

ネージュの写真が欲しい!


……


出来上がったのは、木製牛乳パック?

ただの四角い木製の筒です。

片側は密閉されてて、反対側には石英で作った小さ目のレンズが嵌ってます。

中にはステンレスの鏡が45度角で取り付けられ、鏡の上部には片面がすりガラスのような半透明な石英ガラス。


昔の二眼レフのファインダーみたい。

これで石英すりガラスに、像を魔法で転写することが出来るようになりました。

でも、石英ガラスに外光が当たるために像が薄い。

もっときれいなネージュの写真、欲しいよー。

くっ、外光入らないように囲っちゃったら、像が見えなくなって魔法がうまく発動できない。

よし、ならば…。


転写の魔力変換水晶作って、内寸が石英ガラスと同じサイズの枡に取り付けて石英ガラスにかぶせ、外光を遮断して転写してみた。


にししししし

十分写真と言えるレベルのものが出来上がりました。

鏡像写真?裏から見れば正像だよ。

ズームなし、単焦点、片面すりガラス作るのめんどい。

だけど、カメラ…というより写像機?が出来てしまった。

ネージュの写真に木枠取り付けて、暖炉の上に飾りました。

にゅふふ。


…これ、報告案件だよね。

お昼食べたら街に行こう。

ついでにミシンも持ってくか。

こないだソード君叱った手前、ビバーク出来ないスノーバイクはダメだね。

かける君で行くか。

今度は変なの寄ってこないだろうな…。


昼食終わってかける君で街へ。

今日は門のだいぶ前から徐行したからか、兵士さんは手を挙げて挨拶しただけでした。


ソード商会に到着したら、入口に警備員さんが立ってた。

商会横の荷物積み下ろしスペースに案内されました。

かける君を見ていてくれるそうです。


今日はソード君いるそうなので、ミシンと写像機持って執務室へ。

ここにも警備の人が立ってる。

警備員さん増えたよね。

警備員さんが取り次いでくれて、中に入りました。


「ようお嬢、今日はどうした?」

「二つほど見てもらいたいものが出来たから持ってきたの。時間ある?」

「おう、大丈夫だ」

「じゃあまずはこれ。ミシンって言って、布を縫う道具」

「…悪い、俺、そっち関係は知識無いぞ」

「じゃあ、手縫いから説明するよ」


テスト用にと持ってきてた端切れで、手縫いの仕方を説明します。

手縫い用の針と糸は、森で枝に引っ掛けた服の修繕用に持ち歩いてるからね。

手本見せたらソード君、案の定やりたがった。


「いて」

「早く縫おうとするとそうなるんだよ。で、そんな時の機械がこれ。見ててね」


ガー

端切れで小さなきんちゃく縫いました。


「早っ!」

「大きなものを縫うときは、かなり助かると思うよ」

「針子って仕事があるのは知ってるが、これ使ったら仕事無くならないか?」

「人がガイドしなきゃ縫えないから、どっちかって言うと生産能力が上がって、服が安くなると思うよ。それに刺繍とかはこれじゃ無理だから、お針子さんは必要だよ」

「服屋がこぞって買いそうだな」

「じゃあ、次ね。ソード君、私がいいって言うまで動かないでね」

「ん?お、おう」

「…はい、もう動いていいよ」

「…何だったんだ?」

「これ」


ソード君に出来た写真を渡しました。


「お、俺が絵になってる!?しかも背景まで正確に描かれてる!」


そうきたか。


「これ、絵じゃないよ。見えてるものをそのまま写し取る機械。ここ見て」


新しいすりガラスをセットして、ネージュを写します。


「ここに写ったものを、そのままの状態でこっちの枡みたいな魔道具で焼き付けるの。紙でも少しは映るけど、片面をすりガラスにしたのじゃないときれいに映らないの」


ソード君、紙を持って来て実験してます。

被写体私かよ。

でも、紙じゃ私ってわかんないぞ。


「撮りたいのが決まったら、枡かぶせて水晶に魔力を数秒流してみて」

「流したぞ、もういいのか?」

「見てみて」

「あー、薄っすらぼんやりだけど、確かに映ってるな」

「じゃあ、今度はその水晶作るための魔法ね」


水晶ランタン使って紙に影を落とし、影を転写してもらいます。


「…これ、結構魔力要るな。変換水晶作るのは大変そうだ」

「慣れたら魔力消費少なくなるから、多分大丈夫だよ」

「おう……。さっきのも売れると思ったが、これはとんでもなく売れるぞ」

「でも、写像板…そのガラス板ね。それ作るのは外注した方がいいよ。細かく均一に作らないと写りが悪いから」

「なるほど、像を写すから写像板か。専門の職人に作ってもらった方がいいな。…しかし、すごい機械だな。風景が板に写るなんて思いもしなかったぞ」

「あー、中身すごく単純だよ」


レンズ部外して中身見せました。


「なんじゃこりゃ!何でこんなんで写るんだよ!?」

「写すだけなら指だけで出来るよ」


人差し指丸めて小さな穴を作り、水晶ランタンをピンホールカメラの原理で紙に写してみました。


「うわ、見にくいけど確かにランタン写ってる。魔法じゃないのか?」

「違うよ、誰がやってもそうなるの。鏡みたいなただの現象だから」

「…これ、マギが見たらやばいな」

「え?また私誘拐されるの?」

「おう。現物送らずに設計図だけ送るわ。自分で作れば誘拐には来ないだろう」

「ぜひそうして。もう抱えられたくないわ」


ソード君にピンホールカメラの原理や枡の理由を話して、ミシンと写像機の設計図だけ渡して帰りました。

ミシンも写像機も、おうちで使いたいから持って帰るよ。


よし、今日は変なのに会わなかったぞ!


帰りにお墓参りに寄ろうとしたら、森の中まで道が出来てた。

まあ、邪魔な木が切り倒されて、ロープ張ってあるだけだけど。


東の森ダンジョンに向いて続いてるから、冬場の雪上車用だね。

深い雪の森を歩かなくて済むから、兵士さんは楽だよね。

中央の森も道付けてるのかな。


私も道を利用させてもらって、お墓の近くにかける君停めてきました。

積雪は30cmくらかな。

歩きにくいな。


…ネージュさん、雪に足跡付いて無いよ。

重量軽減魔法、自分にかけてるのか。

そうだよね、使ったら便利だよね。

私もまねっこして、お墓までやってきました。

やっぱりかなり雪に埋まってるな。

とりあえず周りの雪、融かそう。


冬真っ盛りだと粉雪だから風魔法で雪を飛ばすんだけど、まだこの時期は雪が重いから熱魔法で融かします。

お墓の周り2mくらい融かして、軽くお掃除してからお参りです。


父ちゃんにはお酒買ってきたんだけど、母ちゃん用のお花、冬だから無いんだよ。

あ、そうだ。

氷で花作ろう。


近くの雪を固めて、氷のバラ作ってお供えしました。


お墓はドーマーみたいな洋風のお堂になってるから、中に雪は入らないけど、真冬は埋まっちゃうね。

森の中は街の共有財産扱いだから、個人の小屋とかは建てられないんだよね。

このお墓もお目こぼししてもらってるようなもんだからなぁ…。


寒そうでごめんね、父ちゃん母ちゃん。

天気のいい日には雪かきしに来るよ。

雪が降り出したので、帰ります。


おうちに帰って、掘りごたつ出しました。

くっ、ミカンが無い…。




翌朝、また雪が増えてた。

50cmくらい積もってるかなー。

そして屋根の雪は落ちてない。

だよねー、そう簡単には落ちてくれないよねー。

よし、融雪実験しよう。


まずは暖炉点火。

そして二階デッキ部に温風器持って行ってスイッチON。

…直ぐ融けるわけないから、日課済ませよう。


あ、折角デッキ暖房するんだから、お洗濯もしちゃおう。


ん?ネージュはお散歩?気を付けてねー。

最近、ネージュはお散歩するんだよね。

どこに行ってるのか知らないけど、天気がいいと午前中お出かけするんだ。

最初はおうちの周辺だけだったのに、徐々に距離を伸ばしてるみたい。

ネージュはレベル8で魔力制御完璧だから、あんまり心配はしてないけどね。


じゃあ私は、せっせと家事するよ。

洗濯機回しながら畑の収穫とお手入れです。

ポーション畑と薬草畑、野菜畑と水田、段々お世話するのが多くなって来て、最近ではお昼近くまでかかることもしばしば。

ちょっと手を広げ過ぎたかな。

でも、水田は倍にはしたいぞ。

私、農家さん?


畑仕事終えて戻ってきたら、東側の屋根は雪落ちてた。

うん、太陽当たってる分、早く落ちたんだね。

一通り家事も終わって、ネージュを待ちながらクッション作ってたら、西側の雪も落ちました。


ドドドドドド


ちょっとびっくりしたけど、融雪機能はちゃんと動作したね。

温風器止めてこよう。


一応屋根をチェックしておこうと思って外に出たけど、見た目は問題なかった。

うん、冬も越せそうだね。


屋根から落ちた雪を見て思いついた。

雪像作ろう。

もっと寒くなると粉雪になっちゃって固まらないけど、この雪なら出来そう。

…ねこバ〇作ろう。

東の庭の方が広いから、ここに作っちゃえ。

まずはボディから。

直方体だから簡単だよ。


…目算誤った、雪が足りん。

地面の雪も、汚れてない所をかき集めてボディは完成。

足付けたけど、こんなにあったかな?


続いて顔部分。

西側に落ちた雪を軽く固めて持ってきました。

顔はたしか笑って歯を剥いてたよね。

そんで、目はちょっと怖目で…。


あ、ネージュお帰り。

…ネージュに首傾げられてしまった。

前世の物は誰も知らないよね。

ヒグマやヘラジカの方が良かったかな?

でも、あいつら可愛くないし。でかくて怖いもん。

よし、なんとかそれっぽい形は出来たな。

うん、ネージュ、お昼にしようか。


昼食挟んで、午後は細部の作り込みと、隣に傘さしたトト〇作りました。

これ、誰かに見られたらなんて説明しよう…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る